令和6年度 新たな課題に対応した人権教育研究推進校としての取組

更新日:2025年04月28日

1 研究当初の児童生徒の状況と課題

   本校の生徒は、全体的に穏やかで落ち着いている。しかし、生活等に課題のある生徒がおり、虐待事案やインターネットにおける人権侵害等の問題も多数あった。また、支援を要する生徒や基礎学力に不安がある生徒も多い傾向にある。加えて、不登校を含む長期欠席生徒及び不登校傾向にある生徒が多く在籍している。様々な課題が露呈した際に、各個人の状況を確認すると、自尊感情が低い発言があったり、自他の権利についての理解が乏しかったりする状況が見られた。集団としては、落ち着いているが、個々が未来を切り拓く力、生きる力を育成していくためには、人権教育の充実が重要であると考え、上記研究主題を設定した。

2 研究テーマ

『 個々の実態に応じ、子どもの権利を尊重した指導の充実

                          ~人権教育は職員室の人権意識の向上から~ 』

3 ねらい

一人ひとりの存在や思いを大切にさせることで自他の人権を尊重できる生徒を育てる

4 具体的な取組

(1)研究の概要(様式1)

(2)各領域における取組

  ア 教科における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・ワークシート・生徒の感想など

 

  イ 道徳における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・使用資料・補助資料、生徒の感想など

 

  ウ 特別活動における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・生徒の感想・アンケート結果など

 

  エ 総合的な学習の時間における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・調査結果・生徒の感想など

 

5 成果と課題

(1)成果

 (a) 生徒理解のための体制・組織作り

・生徒1人ひとりの状況、生徒指導の状況などを教職員で把握・確認・方向性を合わせるため、毎週、「不登校係会」、「生徒指導係会」、「特別支援教育係会」を行った。

・人権教育資料を活用した授業づくりに向けて、人権教育推進委員会を開催し、生徒の発達段階や生徒の実態を考慮した指導案作成を行った。また11月には全体で研修会を行い、全校道徳の指導案を練った。

・前年度から始まった教え合い学習の「ROSEタイム」については、研究推進委員会を中心に、生徒同士が学年の枠を超えて、つながりあえる学びの場の設定について協議を深め、さらなる改良が進んだ。

 (b) 個々の実態に応じた指導方法の充実

   生徒の「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」が守られるよう、以下の指導方法の充実を図った。

ア 「ROSEタイム」における取り組み

・教え合い学習が成り立つこと…生徒の実態に配慮し、教える側、教えられる側、自尊感情、自己肯定感、人間関係などに配慮したグループ構成とした。

・毎回のROSEタイムのアンケート結果をもとに、生徒の状況を確認し、生徒の意見の吸い上げを行った。

・アンケート結果をもとに、職員研修で振り返り、活動の修正等を行った。

・学年を超えた様々な人との接し方を学び、異年学年の生徒との交流の中で、相手意識をもったコミュニケーションの実践的スキルの高まりを生むことができた。

・本校独自コミュニケーション・トレーニングや各教科での主体的な学習の場の設定などの主体的・対話的な学び合いを通して、主体性を育成し、自尊感情を培うことができた。

イ 「ネット社会」とつき合う方法(社会科)

・身近な題材をもとに、「ネット社会」の利便性だけでなく、危険性についても気づくことができた。また、情報モラル・情報リテラシーなどの必要な態度を身につけることができた。

・よりよい社会のために、自他の権利が守られるようにするためにできることを考えていく意欲や、自分もほかの人も大切にしていこうとする姿勢へとつなげることができた。

ウ 「自分らしく生きる」~性の多様性について考える~

・絵本『王さまと王さま』を用いて、性自認や性的指向に悩む人々に焦点を当て、ありのままの自分の気持ちを受け入れることが自分らしく生きることにつながると気づくことができた。

・事前と事後にアンケートをとることで、子どもたちの気持ちや考え方の変容や知識の定着状況、今後の指導の方向性について考えることができた。

エ 多様な性について学ぶ

・県教材「きらめき(令和5年度版)」と独自教材を用いて、多様な性について考えることができた。

・他者との違いに寛容で個性を受け入れようとする姿勢が、人をも救うことがあるということなどに気づいた生徒がおり、今後の学校生活において協調性を身につけていくきっかけになった。

・事前研修を行い、全教職員で指導案の検討や授業評価を行い、性の多様についての捉え方を共有することができた。また、事後に教員向けにもアンケートを行い、今後の校内での人権教育の方向性について考えるきっかけをつくった

 (c) 地域、関係機関との連携

・毎週行われる「不登校係会」「特別支援係会」においてSSWにも参加してもらい、各学年の生徒の情報交換を行うことで専門機関との連携を密に図ることができた。

・不登校生の支援策として、校内サポートルームだけでなく、学校外で民生委員の方と話やゲームをして過ごす場所をつくることで安心して過ごせる場所ができた。

・ROSEタイムの取組では、大学の教授を講師に迎え、全教職員が「教え合い学習について」の研修を定期的に行うことで活動の意義について考えを深めた。

 

   以上のことから、知識的側面、価値的・態度的側面、技能的側面の3つを相互に関連させ合い、意図的・計画的、日常的に指導することで生徒の「自尊感情」を高めながら「実践的知識」を身に付け、「自他の価値観を認め合う態度」「コミュニケーションの力」「共感的な人間関係を育成する力」につなげることができた。また、教師側も「子どもの人権を尊重する姿勢」を大切にし、教科指導、学級経営、生徒指導の中で3つの側面を意識し、組織的に取り組むことができつつある。

(2)課題

   前年度の課題として、「他の人権を大切にする行動のできる生徒育成のためには、学校の人権教育目標の達成に向けた計画の工夫や人権学習授業の改善が必要」という部分があった。それをもとに、これまでの実践に磨きをかけたり、新たな取組を行ったりした。今年度の全校道徳では、事前に全体での研修の時間を設けた。また、授業後に教員向けにもアンケートをとったが、やはり人権教育について自信がない教員が一定数いることが分かった。そのため、今後はさらなる研修の必要性があるのではないかと考える。

   また、授業での学びを家庭生活や地域活動に活かしたり、家庭生活や地域活動での経験を学校生活に活かしたりすることで生徒の行動につながるように、家庭・地域と学校がどのように連携していくのかが引き続き課題である。生徒の学びには、その生活実態にも大きく左右されることもある。友人関係や家庭状況等に不安を抱えている生徒も多い。そうした立場の生徒や保護者の思いや願いを教職員が十分に受け止められるよう、子どもたちへの声のかけ方や、職員同士での子どもについての言動など今後も意識を高めていく必要がある。

   今後は、さらに地域や専門機関との連携を図り、「子どものための学校」「子どものための家庭」の実現を目指した取組をしていきたい。