令和5年度 新たな課題に対応した人権教育研究推進校としての取組

更新日:2024年03月14日

1 研究当初の児童生徒の状況と課題

   本校の生徒は、全体的に穏やかで落ち着いている。しかし、生活等に課題のある生徒がおり、虐待事案やインターネットにおける人権侵害等の問題も多数あった。また、支援を要する生徒や基礎学力に不安がある生徒も多い傾向にある。加えて、不登校を含む長期欠席生徒及び不登校傾向にある生徒が多く在籍している。様々な課題が露呈した際に、各個人の状況を確認すると、自尊感情が低い発言があったり、自他の権利についての理解が乏しかったりする状況が見られた。集団としては、落ち着いているが、個々が未来を切り拓く力、生きる力を育成していくためには、人権教育の充実が重要であると考え、下記研究主題を設定した。

2 研究テーマ

『 個々の実態に応じ、子どもの権利を尊重した指導の充実 』

3 ねらい

一人ひとりの存在や思いを大切にさせることで自他の人権を尊重できる生徒を育てる

4 具体的な取組

(1)研究の概要(様式1)

(2)各領域における取組

  ア 教科における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・ワークシート・資料・生徒の感想

 

  イ 道徳における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・生徒の意見・感想など

 

  ウ 特別活動における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・補助資料・生徒の感想

 

  エ 総合的な学習の時間における取組

    ・取組の概要(様式2)       ・指導案       ・補助資料・生徒の感想

 

5 成果と課題

(1)成果

 (a) 生徒理解のための体制・組織作り

・個々の状況、生徒指導の状況や報告を教職員で把握・確認・ベクトルを合わせるため、毎週、「不登校係会」、「生徒指導係会」、「特別支援教育係会」を行った。

・人権教育資料を活用した授業づくりに向けて、生徒の発達段階や生徒の実態を考慮した指導案作成を行うため、「人権教育推進委員会」を開催した。

・教え合い学習の「ROSEタイム」の導入に向けては、生徒同士が学年の枠を超えて、つながりあえる学びの場の設定について協議を深めるため、毎週、「研究推進委員会」を行った。

 (b) 個々の実態に応じた指導方法の充実

   生徒の「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」が守られるよう、以下の指導方法の充実を図った。

ア 「ROSEタイム」における取り組み

・教え合い学習のグループ構成は、生徒の実態に配慮し、教える側、教えられる側、自尊感情、自己肯定感、人間関係などに配慮した。

・ROSEタイムのアンケート結果をもとに、生徒の状況を確認し、生徒の意見の吸い上げを行った。

・アンケート結果を職員研修で振り返り、情報共有するとともに、活動の修正等を行った。

・学年を超えた交流の中で、相手意識をもったコミュニケーションの実践的スキルを高めた。

・対話的な学び合いを通して、協働の正進と自尊感情を培うことができた。

イ 子どもの権利条約

・子どもの人権に関する法律や条約について指導し、自他の権利について考えを深めさせた。

・権利が守るためにできることを考えさせ、自他を大切にする姿勢を培った。

ウ 制服・校則の見直し

・制服・校則の見直しの過程に生徒を参加させ、意見を述べさせることで、自己有用感を高めた。

エ 人権教育資料「きらめき」の効果的な活用

・「100万回生きたねこ」を教材として、命の尊さや他者とのつながりの大切さについて考えを深めさせた。

・全教職員で指導案の検討を行い、教職員の資質向上につなげた。

 (c) 地域、関係機関との連携

・毎週行われる「不登校係会」においてSSWerと連携し、支援の必要な生徒や家庭に対しての丁寧な指導につなげた。

・不登校生支援として、民生委員と連携し、不登校生へ学校復帰の一助とした。

・「100万回生きたねこ」の授業は、市内道徳担当者に公開するとともに、阪神地区人権・同和教育研究議会委員に公開し、教職員の資質向上につなげた。

・市教育委員会が作成した「みんなで学ぼう!子どもの権利条約」パンフレットを活用し、生徒の人権理解を進めた。

・制服見直しでは、PTAや学校運営協議会と連携し、広い視点からの改善を行った。

 

   これらの取り組みに際しては、知識的側面、価値的・態度的側面、技能的側面の3つを相互に関連させ合い、意図的・計画的、日常的に指導した。そのようにすることで生徒の自尊感情醸成、自他の価値観を認め合う態度の育成、コミュニケーション力の育成につなげた。

 

(2)課題

 (a) 教職員の資質向上

   生徒の人権教育を推進するためには、教職員の資質向上が欠かせない。本研究の推進において、本校においては、組織的に計画を立て、実行し、その取組を評価することをとおして、教職員の資質向上を図った。人権教育の「知識的側面」「価値的・態度的側面」「技能的側面」の視点から既存の取組を捉え直して吟味するなど、教職員の人権意識に高まりは見られているが、日々の学級経営、授業経営、生徒指導等、教育活動の中で、教職員の人権意識をさらに向上させ、子どもたちの権利を尊重した上での教育活動の充実を図っていく必要がある。今後も、継続的な取組をすることで、教職員の資質向上を図る必要がある。

 (b) 開かれた学校づくり

   生徒も教職員も様々な立場の人とともに協働する中で、見守られ、評価されることで、自己肯定感が高まり、自他の人権を尊重する態度の育成につながる。そして、自分とは異なる見方や意見を知り、新たな世界とつながることで新たな視点・考えを得ることができる。生徒が生きる力、未来を切り拓く力をつけていくために、今後も地域や関係機関と連携していく必要がある。