令和4年度2月【学校長の部屋】鴻池小

更新日:2023年02月24日

ウェルビーイングな学校づくり

令和5年2月24日(金曜)

  一昨日、学校運営協議会を開催しました。協議会では、今年度の学校評価について、委員の皆様から学校や家庭の教育のあり方について、多くの意見をいただきました。子ども、保護者、地域、教職員にとって、心地よい学校、ウェルビーイング(well-being)な学校を目指して来年度の学校経営を考えていきたいと思っております。

  さて、「ウェルビーイング(well-being)」な学校とは、どんな学校なのでしょうか。ウェルビーイング(Well-being)という言葉を直訳すると、「幸福」「健康」という意味です。WH0(世界保健機関)は憲章の中で、健康を「身体面・精神面・社会面のすべてにおいて良好な状態(well-being)にあること」と定義しています。以来、欧米では医学や心理学の領域を中心に、ウェルビーイングの研究が進められてきました。

  日本においても、ウェルビーイングの考えを軸に、教育の在り方が変わろうとしています。教育再生実行会議『ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)』(2021年6月3日)では、「ポストコロナ期における新たな学びの在り方を考えていくに当たって、こうした課題を解決するためには、一人一人の多様な幸せであるとともに社会全体の幸せでもあるウェルビーイング(Well-being)の理念の実現を目指すことが重要であるとの結論に至りました。この幸せとは、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれ、このような幸せが実現される社会は、多様性と包摂性のある持続可能な社会でもあります。こうした社会を実現していくためには、一人一人が自分の身近なことから他者のことや社会の様々な問題に至るまで関心を寄せ、社会を構成する当事者として、自ら主体的に考え、責任ある行動をとることができるようになることが大切です」と、新たな時代の教育はウェルビーイング理念の実現に重きを置くべきだと結論づけています。

  「幸せ」と言うことについて、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科研究科委員長・教授 前野 隆司先生は、幸せに影響する要素は、主に次の4つの因子が影響していると言われています。

  • 「やってみよう」因子
  • 「ありがとう」因子
  • 「なんとかなる」因子
  • 「ありのままに」因子

一つ目の「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)は、「夢」や「目標」「やりがい」を持ち、それを実現しようと努力し成長していくことが人の幸福感を高めるというものです。二つ目の「ありがとう」因子(つながりと感謝の因子)は、多様な人とつながりを持ち、人を喜ばせたり、人に親切にしたり、感謝したりすることが幸せをもたらというものです。三つ目の「なんとかなる」因子(前向きと楽観の因子)は、自己肯定感が高く、ポジティブにいられることが幸せにつながるというものです。最後、四つ目の「ありのまま」因子(独立とマイペースの因子)は、他人と比較せず自分らしくやっていける人は、そうでない人より幸福だというものです。

  「自己実現と成長」、「つながりと感謝」、「前向きと楽観」、「独立とマイペース」、これらの4つの因子を満たすことで、人は幸せになれると。子どもが毎日学校に行きたい、先生が働きたいと思えるような笑顔があふれるウェルビーイングな学校づくりを目指したいと考えます。

 

家庭学習のすすめ

令和5年2月14日(水曜)

  全国学力・学習状況調査の結果から、家庭学習に取り組む時間が長い子どもほど、学力が高いことが分析されています。まずは、毎日机に向かって勉強する習慣をつけることが学力向上にもつながります。文部科学省も小学校学習指導要領解説において「小学校教育の早い段階で学習習慣を確立することは,その後の生涯にわたる学習に影響する極めて重要な課題であることから,家庭との連携を図りながら,宿題や予習・復習など家庭での学習課題を適切に課したり,発達の段階に応じた学習計画の立て方や学び方を促したりするなど家庭学習も視野に入れた指導を行う必要がある」と示しています。本校では、「家庭学習 = 宿題」とは考えていません。「家庭学習 = 宿題 + 自主学習」と考えています。「自主学習」、疑問に思ったことを調べる、本を読む、予習・復習を行うなど、生涯学習の基礎作りの観点からも取り組んでいるところです。でも、進んで机に向かって勉強をするという子どもはあまり多くはありません。保護者の皆さんからすると、それができないから困っているという方が多いかもしれません。いやいやさせても長続きするものではありません。かといって放っておくわけにはいかないし、困られているのではないでしょうか。子どもにとって勉強は、学校の授業が基本です。授業の復習と予習、自主学習を行う家庭学習は、短時間に、効率よく行うことが大切です。

  小学校低学年では、授業内容が簡単で勉強しなくてもテストでは比較的よい点数をとることができます。だからついつい、毎日の勉強がおろそかになりがちです。でも、低学年の時期が家庭学習の習慣をつけるには最もいい時期といえます。まずは、宿題があるときは先に宿題を済ませ、その日に学習した教科書の部分を声に出して読み返す、習った漢字を10回書いて覚える、計算練習をするなど、基礎的・基本的な内容を復習します。大事なのは、そのとき一緒に親も横についてあげて、丁寧に字が書けているかをよく見てあげて、できていれば、「きれいに書けたね」と声をかけたり、花丸をしてあげたり、心から褒めてあげると、子どもはうれしい気持ちになります。同時にできる喜びを味わうことができます。中学年になると、理科、社会科、総合的な学習の時間が増え、学習内容も少しずつ難しくなります。どの教科も内容をおろそかにできないものばかりです。また、調べ学習も多くなり、自分なりに学び方を身につけ、与えられた課題だけではなく、自主的に学習する姿勢が求められます。その一方で、自立心が芽生え、親の関わりを嫌うようになってきます。必要に応じて、わからないところを一緒に考えたり、ヒントを与えたりしながら手助けをし、家庭学習が終わったら、よく頑張ったことを褒めてあげてください。高学年になると、学習内容も一段と難しくなり、筋道を立てて考える力や広い視野で物事を見る力が必要になります。自ら学ぶことのおもしろさや楽しさを経験することで、ものの見方や考え方を育てることができます。しかし、自立心も強くなり、間違いを指摘したり、アドバイスしたりすると、自尊心が傷つけられることもしばしば、親の言葉や態度には注意が必要となってきます。心の成長や深まりが見え始めるこの時期、親が横について関わっていく必要はありませんが、「あなたのことを見ているよ」という家族の温かな見守りが必要です。低・中・高学年に共通していえることは、忙しい中ではあると思いますが、ちょっとした隙間時間を見つけて「認めて・ほめて・見守って」を続けることがやる気と子どもの自己肯定感を育てることにつながります。

  わたしたち教師自身が、効果的な家庭学習を推進するためには、普段の授業から学習することの喜びを実感させ、授業で学習した内容と関連づけながら家庭学習を行うことが大切です。授業における指導の工夫と家庭学習の充実を図り、確かな学力の育成に努めていきましょう。

初任者研修

令和5年2月9日(木曜)

  今日は、伊丹市で今年採用となった小学校や中学校の先生方の研修会が本校でありました。研修会では、4年生の横山主幹教諭が算数科『変わり方』の単元の師範授業を行いました。その師範授業の研究協議の前に少し時間をいただき挨拶をさせていただきました。

  先生方は、新しい学校での勤務もあと2ヶ月で1年になります。楽しいこと、苦しいこと色々あったと思います。私も教員として最初に勤めた年の1年目は大変落ち込んでいましたからよく分かります。落ち込んでいる時に、そこから将来を考えると自分は教員としてやっていけるのだろうかと思いがちです。しかし、一生懸命に誠意を持って努力をすれば、周囲の人は、先生の姿を見て助けてくれます。誠意を持って努力することが大切です。

  さて、イノベーション(技術革新,新しい手法)が求められる現代において、新たなアイデアが求められています。10年後の学校はどうなっているのでしょうか。変化の激しい時代です。私には想像もつかないです。先生方は間違いなくその中心として学校教育に携わっている人たちです。いつの時代になっても学び方の手法は同じです。「TTP」って言葉を聞いたことがありますか。今日は、一つ[TTP]を覚えて帰ってください。TTP、「徹底的にパクる」ということです。何かスキルを身につけたい時に人を真似るのは大事なことです。ビジネスの社会では当たり前のように使われています。絵画の巨匠パブロ・ピカソの名言に「優れた芸術家は真似る。偉大な芸術家は盗む」とあります。偉大な芸術家もひらめきから出てくるわけではなく、まずは模倣からはじめて、そして「盗み」自分の作品をつくっていることがわかります。誰でも最初は「真似る」ことから始めます。これが「学び」の基本です。

  子どもたちの「学びの充実」を図る上で大切にしたい手法です。「こういう子どもを育てたい」というビジョンを達成するために、学校にある「資源」を有効に活用することです。「資源」といっても人的資源です。学校に必ず素晴らしい先生がいるはずです。ビジョン達成のために「これはいける」と思ったら、TTP、どんどん取り入れたらいいのです。さらに言えば、TTPS、「徹底的にパクって進化させる」です。今日の横山先生の算数の授業で,これは使えると思えるところを盗むことです。算数の授業の中には、子どもとの関係や学級経営が見えてくるはずです。せっかくの機会です。何か盗めるものを盗んで自分の学級に生かしてほしいと思います。人間は誰しも生涯にわたって不完全な存在です。ですから、私たちは絶えず、自分を磨く努力をしていかねばならないと思います。先輩教師からもたくさんのことを学んでください。

  最後になりますが、初任者の皆さんも健康第一に過ごされ、残りの研修も充実されますよう、頑張ってください。

業間運動が始まりました!

令和5年2月7日(火曜)

  先週から火曜日と木曜日に、体力向上・健康の保持増進を目的として、全校で業間運動としてなわとび運動に取り組んでいます。子どもたちはそれぞれに目標を立てて取り組んでいます。いろいろなとび方ができるので驚きです。ここ数年、新型コロナウイルス感染症対策のため、運動場で一堂に会して運動に取り組むことができませんでした。各学年配布された縄とびカードを元に自分で目標を立てながら、交差とびやあやとび、2重とびなどにチャレンジしていました。なわとび運動は持久力や筋力アップだけではなく、脳が活性化し集中力もアップすると言われています。

  文部科学省が昭和39年から行っている「体力・運動能力調査」によると,昭和60年ごろを境に子どもの走る力、投げる力、握力など、ほとんどの項目で体力が低下していると言われています。本校でも、ここ数年の結果を見たとき、体力の低下が感じられます。特に、男子の握力や、上体起こし、反復横とび、50m走においては、体力の低下を示している結果となっています。

  昨日は、学校保健委員会があり、3年生の子どもたちを対象にサーキット運動を、講師の先生を招いて実施しましたが、スキップができない子どもの多さにびっくりでした。自分の体を操作する能力も低下しているのかもしれません。これまで、遊びの中で習得した動作、走る、蹴る、ジャンプする、回るなど様々な基本的な動作ができなくなっています。嘗てであれば、子どもたちが熱中しためんこやゴム跳び、缶蹴り、鬼ごっこ、竹馬、三角ベース,なわとびのような遊びの体験を通して体力を自然と身につけたものです。しかし、年代が進むにつれて外で遊ぶ子どもの数も減少し、家に閉じこもって、スマホやゲームなどの手軽で刺激的な遊びを好むようになってきています。その影響は、子どもの体力の低下に大きくつながっているように感じます。

  スウェーデンのブンケフロという町の小学校では、研究のために毎日体育の授業を組み入れられたクラスと、週に2回だけ体育の授業を組み入れたクラスで学力に違いが出るかどうか実験が行われました。結果は、毎日体育をしたクラスのほうが算数・国語・英語において成績が明らかに優秀だったことがわかりました。さらに、その効果はその後何年も続くことが確認されました。アメリカにおいても同様の調査が行われ、記憶中枢として脳にある海馬は運動によって刺激を受けると成長することが確認されています。さらに、身体運動直後、記憶力と集中力が向上することも立証されています。このように考えると、体力の低下は、今後学力にも影響がでるのかもしれません。

  体力は、人間の発達・成長を支え、人が知性を磨き、知力を働かせて活動をしていく源です。また、体力は、生活する上での気力の源です。体力・知力・気力が一体となって、人としての活動が行われていきます。体力は「生きる力」の極めて重要な要素といえます。