令和5年度3月【学校長の部屋】鴻池小

更新日:2024年03月29日

最後の「学校長の部屋」

令和6年3月29日(金曜)

今日が、私の書く最後の「学校長の部屋」になります。本当であれば、昨年度末をもって退職したのですが、「もう1年頑張りなさい」との声をいただき、再任用校長として務めてきました。この31日をもって、私の本当の退職となります。4月からのことは後任の校長に託します。

鴻池小学校で勤務した4年間は、コロナ禍の4年間でした。どう乗り越え、何ができるかと、先生方と疾風怒濤の4年間を過ごしてきました。コロナ禍であっても「学びを止めない」を大事に、「失敗を恐れず『まずは、やってみよう!』」を合言葉に取り組んできました。しかし、子どもたちや保護者の皆様、教職員にとってどうだったかを考えた時に、十分でない面が多かったと思います。そんな4年間でしたが、はっきりしていることは、私は鴻池小学校の子どもたちが大好きだから頑張れたということです。休み時間に校長室にやってきてみせる笑顔、廊下で会うとしっかり挨拶をする子どもたち、話したことをしっかりと受け止めてくれる子どもたち、廊下から校長室に向かって笑って手を振ってくれる子どもたち、子どもらしい子どもたちがいっぱいの学校です。そんな子どもたちの様子を伝えたい、また、現在の教育や学校の状況について知ってもらいたいという気持ちで学校ホームページを毎日更新してきました。

中でも、「学校長の部屋」は、鴻池小学校に来たときに、自分が一番苦手なこと、文章を書くことに取り組もうと始めたものです。特に、伝えたかったことは、学校での子どもたちの様子や私の教育に対する思い、今の教育の状況などです。長い文章で読みにくかったと思いますが、これまでおつき合いいただき本当にありがとうございました。

こんな素晴らしい子どもたちに囲まれて最後を締めくくることができ、本当に幸せな教員人生でした。少し大袈裟かもしれませんが、守護神として実績を築いてきた元阪神タイガースの藤川球児投手の言葉を借りるなら「教員人生に悔いなし」的な心境です。これで一区切りつきましたが、まだまだ休むことなく、次の仕事にも全力で取り組みたいと考えています。

子どもたち・保護者・地域・関係諸機関等々、これまで関わってきた全ての皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。鴻池小の子どもたちの未来に幸あれ!いつまでも応援しています。

令和5年度 修了式 式辞

令和6年3月25日(月曜)

  今年度の学習が今日で終わります。3月19日には、6年生が鴻池小学校を卒業し少し寂しくなりました。今年度、失敗を恐れず「まずは、やってみよう!」を合い言葉に、先生も皆さんも一緒にチャレンジしてきたと思っています。

  代表の人に修了証を渡しました。修了証は、「今年一年間、学習、生活、運動によくがんばり、その学年の学習内容を無事に修めることができました、次の学年に進むことができます」という証明です。皆さんは、この一年間、しっかり成長したと思います。

  1年生、本当に心も体も大きくなりました。ひらがな・カタカナ・漢字もしっかり読めるようになりました。お友達にも優しくできるようになってきました。みんなで行動することや話をしっかり聞くこともできるようになりました。「一日入学」では、幼稚園の子に優しく接していました。そんな大きく成長した皆さんも今度は2年生です。

  2年生、「やってみよう」を学年目標に1年生を迎え、お兄さん・お姉さんとして学校生活のお手本となっていこうという気持ちを大切に努力してきました。1年生や幼稚園の子を迎えて行った『おもちゃランド』、皆さん一人ひとりの頑張りを感じることができました。算数の九九やかけ算の学習も6年生に聞いてもらい頑張りました。そんな元気いっぱいの2年生も4月からは中学年です。

  3年生、社会・理科・習字やリコーダー・総合的な学習の時間など新しい学習が増えました。中でも、総合的な学習の時間には、社会科の学習と共に伊丹市のいいところや伊丹市の昔の様子など、自分で調べることを学びました。また、調べたことをまとめて自信をもって発表することもできました。元気・本気で頑張った3年生の皆さんも、今度は4年生です。

  4年生、この一年で、皆さんは、4月の頃とは比べられないほど、堂々とした態度で様々な活動に取り組めるようになりました。4年生は、10才という節目の年です。自分を振り返るとともに、今後に向けての夢や希望を高めることができました。そんな皆さんも今度は高学年の仲間入りです。今の5年生を支えながら、鴻池小学校をもっともっと元気・本気・笑顔がいっぱいの学校になるように引っ張ってほしいと思います。

  5年生、自然学校で学んだことが、その後の学校生活にしっかり生かされていました。これは素晴らしいことです。特に体育大会で見せてくれた表現は、皆さんが主体的に取り組んでできあがったものです。その姿に感動しました。そして、たくさんの拍手をもらうことができたのは皆さんの頑張りに対してです。4月からは学校を引っ張っていく皆さんは学校のリーダーです。ぜひ、皆さんには「有言実行」「率先垂範」などを意識しながら、リーダーにふさわしい「言動」を心掛け、「下級生から頼りにされる」リーダーになってほしいと思います。

  鴻池小学校の皆さん一人一人には素晴らしい力があります。「あれもない」、「これもない」ではなく、一人ひとりにはその人にしかないよさがあります。自分に自信を持ってこれからも、皆さんがもっている豊かな力を自分自身や仲間と共に引き出し、伸ばし、磨いてください。

  今日は、1 年間の締めくくりの話として、ディズニーランドを作った「ウォルト・ディズニー」のことを紹介します。ディズニーは、子どものころから、人を喜ばせるのが大好きでした。彼は絵が得意で、絵をかいて、皆が喜んでくれるのを見ることが、何より、うれしかったのです。そして、いつしか自分は絵で人々に勇気をあたえていこう、愛と喜びをあたえていこうと決めます。でも、漫画を描く仕事やデザインの仕事などをしたり、会社を作ったりしましたが、失敗の連続でした。映画づくりもはじめました。だんだん名前も知られるようになりました。そんな時です。ディズニーは、信用していた人に、だまされ、裏切られてしまいます。悲しみのどん底でディズニーがひとりぼっちで絵をかいていた時、部屋に現れたネズミ、その小さな友こそが”ミッキーマウス”の誕生だったのです。それもすぐに人気が出たわけではありません。世界中のどこにもない「夢の王国」をつくりたいという夢の実現のためにあきらめなかったのです。その夢への思い、たくさんの人を喜ばせてあげたい、その気持ちから、あのディズニーランドが1955年に生まれたのです。ディズニーは、こんな言葉を残しています。「失敗したからって何なのだ? 失敗から学びを得て、また挑戦すればいいじゃないか」と、ディズニーのように、あきらめないで努力するかぎり、心の中の夢の木は伸び続けることができます。努力こそ、夢を育てる栄養分なのです。

  夢は、人間だけしか持つことができないものです。夢のない人は寂しいし、いつも現実に追われているだけでは、苦労や悲しみに負けてしまいます。夢のある人には希望があり、心が強くなります。そして、苦しみを楽しみへと変えていくことができます。ディズニーのように、あきらめない夢を持ち、新しい学年に大きな夢を持って、その夢の実現のために努力してください。

令和5年度卒業式式辞から

令和6年3月19日(火曜)

  校庭の木々のつぼみが、やわらかな春の光に包まれて少しずつふくらみを増してきました。この春の佳き日に、本校第四十一回卒業生として、中学校へ巣立つ日を迎えた九十六名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

  担任の先生が心をこめて呼ぶ名前に、皆さんはしっかりと答えてくれました。凜々しく、さわやかな皆さんの姿に、私はとてもうれしく、誇りに感じています。今、手にしている卒業証書には、この6年間の学びの成果、そして、家族や地域の方々の期待や希望が詰まっています。そのことを是非、受け止めてほしいと思います。

  皆さんは小学校での六年間で、たくさんの体験や学習を通し、心も体も立派に成長しました。特に最後の一年間は、「つながろう鴻池」をテーマに最上級生として、一人一人が責任を持って下級生に見本を示し、その役割を果たしてくれました。委員会活動やクラブ活動では、最上級生として全校児童をリードし、異学年交流では、下級生のことを気遣い優しく声をかけていました。修学旅行では、各クラスで平和への思いを込めたスローガンのもと、戦争の恐ろしさを目の当たりにし、セレモニーでは平和への誓いを宣言してくれました。そして、戦争の恐ろしさや平和の尊さを下の学年に繋いでくれました。忘れられないのが体育大会で見せてくれた「繋げ」、6年生の想いを一つに繋げる!明日に繋げる!下の学年に繋げる!と、一人一人の気持ちがつながり、協力することの大切さ、挑戦することの大切さ、「6年生ここにあり」の姿に感動をおぼえました。小学校生活最後の音楽会。合唱「ふるさと」では、歌詞にある「助け合える友との思い出を、いつまでも大切したい」が、いつまでも心に残っています。音を繋ぎ、心を繋いでくれた音楽会。全員の気持ちが一つになりました。 皆さんは、この学校で、友だちと学び合い、認め合い、高め合い、一人一人がすばらしい力を身につけながら、「ひとみ輝き 笑顔あふれる鴻池小学校」をめざして努力しました。どの思い出にも鴻池小学校の最高学年として、すばらしい姿がありました。皆さんの言動、身をもって示してくれた鴻池小学校の最高学年としての在り方は、今皆さんの背中を見つめている五年生がしっかりと引き継いでくれるはずです。

  さて、これからの社会は、グローバル化、急激な情報化、少子高齢化、AI(人工知能)の飛躍的な進化など、予測困難な時代を迎えようとしています。皆さんの前途は決して順風満帆というわけにはいきません。大きな壁が立ちはだかることがあるかもしれません。このような時代、「自分で考え、判断し、行動する」ということを大切にしなければなりません。

  卒業のはなむけに、一つの言葉を紹介します。この言葉は、学校朝礼や2学期の終業式でも話をした相田みつをさんの言葉です。「夢はでっかく 根はふかく」。夢は自由であり、無限です。つまり、人には無限の可能性があり、その自分に与えられた可能性を引き出すには、大きな夢を持ち、諦めないことです。そして、大きな夢を実現するためには、それを支える強い心、しっかりとした根っこが必要です。見えない根っこが大切。つまり、見えない努力が大切ということです。根が深くなればなるほど、夢も大きくなります。「夢はでっかく 根はふかく」の「根」の深さにこだわりを持ち、自分らしさを大切に、歩んで行ってください。この先、苦しいことや辛く厳しい経験をすることが必ずあるでしょう。しかし、根を深くはる、努力や苦労を惜しまない人であってほしいと思います。乗り越えられない試練が、その人に与えられることはありません。皆さんの可能性は無限です。見えない根の部分を、自分でしっかり育ててください。皆さんの未来に、大きな花が、大きな夢が咲くことを願っています。

  四月から中学生になる皆さんには新しい世界が待っています。希望や期待と同時に不安もあると思います。しかし、失敗を恐れず新しいことに挑戦してください。「ファースト・ペンギン」です。自分が正しいと思ったことは、勇気を出して実行してください。そして、目標や夢の実現に向けて、今できること、今やらなくてはいけないこと、頑張ればできそうなこと、そんな努力を続けてください。そうすれば夢はきっと目標にかわり、実現に近づきます。皆さんのこれからの益々の成長と活躍を期待しています。

  最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。皆様の深い愛情に包まれて、今日の佳き日を迎えることができました。この6年間の思い出は子どもだけのものではありません。皆様のものでもあるはずです。子ども達は、人生において最も多感な時期に入ります。楽しみの多い反面、保護者として悩むことも多いかと存じます。しかし、皆様の前向きに生きる姿が、必ず子ども達を勇気づけます。子ども達が「夢」に向かう姿をどうぞ温かく見守り支えてあげてください。家族の温かい支えが子ども達の成長には欠かせない大きな力となります。地域の皆様、そして保護者の皆様からこれまでいただきましたご厚情に深く感謝いたしますと共にこれからも地域の宝である子どもたちを見守り支えて頂きますようお願い申し上げ私の式辞といたします。

フルスイング

令和6年3月13日(水曜)

  2008年放送されたNHK土曜ドラマ「フルスイング」のモデルとなった高畠導宏さん。高畠さんは、プロ野球の打撃コーチとして30年、落合博満選手やイチロー選手、小久保裕紀選手など数々の好打者を育て上げました。その後、高畠さんは30年間の打撃コーチとして培ったことを伝えたいと、59歳の時一念発起して高校の教師になり、甲子園を目指します。高畠さんには教師の経験がなかったのですが、30年のコーチ人生で培った優れたコーチング力で、悩める思春期の子どもたちと現場の教師たちを大きく変えていきます。教師になり一年が過ぎようとした時、高畠さんは病に倒れます。たった一年の教師生活の後、60歳で生涯に幕を降ろしました。「甲子園への遺言」(講談社)の本の中で高畠さんのことが書かれています。その中で、高畠さんは高校生に次のような話をしています。

  「私は、プロ野球の世界で、35年間も暮らしてきました。最初の五年間は選手として、そして後の30年間はコーチとして。そこでたくさんの選手に出会い、ともに戦い、一緒に汗や涙を流してきました。その中で、伸びる選手には共通するものがあることに気がつきました。そして、それは、プロ野球の選手に限らず、一般の人も同じだということがわかったのです」と。プロ野球で、さらに人生そのもので大切な伸びる人の共通点を7つあげています。

1 素直であること

2 好奇心旺盛であること

3 忍耐力があり、あきらめないこと

4 準備を怠らないこと

5 几帳面であること

6 気配りができること

7 夢をもち、目標を高く設定することができること

  また、高畠さんは、「『気力』の“氣”という字は、“メ”じゃなくて“米”を書くんだぞ」と、黒板に大きく何度も大きく「氣力」と書いたようです。これからの人生で様々な困難に立ち向かうことになる生徒たちに気力でそれを克服することを何度も話をされました。「人生をより豊かに有意義にするためのバックボーンが『気力』である。『気力』がなければ困難を克服することはできない」と、気力の存在を重視されていました。そして、「『気力』は一朝一夕にできるものではない。まず、心の中で燃えるような熱意をもつことである。そして、その熱意を持続せしめるのである。持続させるためには反復が必要で、常に積極的な熱意をもって意識している必要がある。無意識の世界、ただなんとなくという意識からは、決して『気力』は生まれてこない」と、語られています。夢をもつこと、夢をあきらめず、努力し続けることないこと、気力をもってすれば、何事も乗り越えられることを教えられたように思います。

「All's Well That Ends Well」

令和6年3月6日(水曜)

  『一月は行く、二月は逃げる、三月は去る』と昔から言われるように、1月はあっという間に行ってしまったと感じています。そして、2月は逃げるように、3月も駆け抜けるように去って行ってしまいます。1年のしめくくりの時期に来ました。この時期、年度の終わりと新年度を意識して仕事を進めなければなりません。仕事の始めた段階で終わっていて、終わった段階では、もう既に始まっています。「終わりは次へのはじまり」ということです。

  シェークスピアの戯曲に「All's Well That Ends Well」があります。日本では「終わりよければすべてよし」と訳されています。ことわざとして知られている言葉です。物事は最後の締めくくりが大切であることを指して使う言葉です。物事には始まりがあればいつか終わりがあります。

  世界的ベストセラーとなったスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』の第2の習慣として、「終わりを思い描くことから始める」ということが紹介されています。ゴールや目的をしっかり定めずに物事を始めることは、地図を持たず知らない土地で迷子になっているのと同じです。何かを実施する際には、まず、目指す目的地やありたい姿を描いて綿密な計画を立てる。そして実際の行動に取りかかることが大切です。

  心理学には「ピーク・エンドの法則」というものがあります。「人はある出来事に対し、感情が最も高まったとき(ピーク)の印象と、最後の印象(エンド)だけで全体的な印象を判断する」という法則です。この法則は、心理学・行動経済学者のダニエル・カーネマン氏によって提唱されたものです。例えば、ディズニーランドで長い時間並んでアトラクションに乗った。いざ順番が来てアトラクションを思いっきり楽しむ(ピーク)ことで 乗り終えた多くの人が楽しかった(エンド)という満足感が強く印象づけられます。

  子どもたちがこの一年を振り返って、「〇〇楽しかったな」と楽しかった感情、ピークの時のことを思い出し、1年の最後(エンド)を迎えられたならば、この一年全体が「楽しい1年だった」という印象になることでしょう。「終わりよければすべてよし」、「いろいろあったけど、最後は楽しく終わることができた」と子どもが思えるよう、ここは一つ教師の正念場かな。そしてもう一つ、「終わりは次へのはじまり」です。迎える次の1年をどう過ごすべきかを考える時期でもあります。最後までしっかりと子どもたちを支えていきます。