令和5年度9月【学校長の部屋】鴻池小

更新日:2023年09月27日

Enjoy!限界をこえろ!

令和5年9月27日(水曜)

  9月も後半に入ると朝夕めっきり涼しい日が増えてきました。夜になるとどこからともなく虫の声が聞こえてきたりもします。日中は日差しが強い日もあり、まだまだ暑さを感じることもありますが、季節は着実に進んでいるようです。いよいよ体育大会も今週末に迫ってきました。8月末から体育大会の取り組みが始まり、自分の技を磨き、また友だちと共に助け合ったり、競い合ったりしながら、子どもたちはどんどん成長してきました。

  今年の体育大会のスローガンは「Enjoy!限界をこえろ!」と決まりました。スローガン「Enjoy!限界をこえろ!」には、「限界を超えた先に楽しさがある」という意味が込められていると思います。中途半端では楽しむことはできません。友だちと声をかけ合いながら自分の限界を超えるチャレンジをしてほしいと願います。あきらめないで、何事にもチャレンジする気持ちは、将来子どもたちが大人になって社会で活躍したり、たくましく生きていったりする上で、身につけるべき資質・能力であると考えます。体育大会のような大きな行事は、子どもたちの望ましい成長を促す大切な経験となります。「みんなで協力し合って成功した」、「精一杯頑張った」という経験を通して、子どもたちは達成感や満足感を得ます。

  一人ひとりが力を出し切り、仲間と力を合わせ、心に残る、笑顔があふれる体育大会にするために、一つには、本気で最後まで全力で取り組むことです。表現や学級全員リレー、難しかったり、辛かったりすることがあると思いますが、諦めず、最後まで全力で取り組めば必ずよい結果が出ます。二つ目は、クラスや学年の友だちとの絆を深めることです。体育大会に向けて共に力を合わせ、心一つに取り組んできました。体育大会に向けての取り組みは、これまで以上に絆を深める機会になります。三つ目は、自分自身で「これだ!これを頑張る!」という目標を決めて取り組むことです。

  体育大会当日は、表現や学級全員リレーの中で輝く子どもの姿だけではなく、あきらめずに頑張り抜く子、協力する子、役割や責任を果たそうと子の姿にも注目していただければと思います。そして、体育大会が子どもたちの成長にとってよりよい体験となり、さらに今後の生活をよりよくしていこうとする意欲の高まりにつながってくれることを期待しています。頑張れ!鴻池っ子!

特別な教科道徳「ぼくの仕事は便所そうじ」

令和5年9月20日(水曜)

  今年度2回目の校内研究授業は、6年生による特別な教科道徳「ぼくの仕事は便所そうじ」でした。子どもたちの主体的な学びをどのように引き出していくかを研究実践したものです。子どもたちは、働くことの意味について真剣に考え、議論しました。働くことの大切さは分かっていても、自分事として取り組むこと、やりがいを持って取り組むことについて考える機会となりました。

  この教材となった「ぼくの仕事は便所そうじ」は実話で、「ぼく」は、この話の著者である西山登志雄さんのことです。カバ園長と呼ばれ親しまれた西山さんの初めての仕事は、戦後間もないころの上野動物園の便所掃除でした。16歳の少年にとって、決した楽しい仕事ではありませんし、嫌々やっていました。そんなある日、便所掃除をしているところに、おばあさんが「この便所は誰がそうじしてくれたのかしら。とてもきれいになっていて、使っていて、ほんとに気持ちがいい。ありがたい。ありがたい。」と言いながら出てきました。その言葉を聞いた西山さんは、金槌でぶん殴られるほどのショックを受けました。それから、西山さんは、一生懸命やって、世界一の便所掃除になろうと考えるようになりました。この学習を通して、一生懸命働くことが学校生活や社会の役に立っていること、周り人の喜び、ひいては自分の喜びにつながっていることに気づかせたいという思いがあります。

  授業終了後には、総合教育センターの指導主事を講師に事後研修会を行いました。研修会では、教師と児童の発話記録を基に、児童の学びがどう深まったのかを協議をしました。子どもたちの学びが「主体的・対話的で深い学び」となっているのかを検証していきます。まずは、教師の問いかけに対して、子どもたちが課題を意識して、見通しを持って臨んでいるのか。課題に対する発言が子ども同士つながっているのか。さらには、本時の目標に向かって、子どもたち自身が自分の言葉で振り返ることができたのか等を検討していくことが大切になります。今回の授業を通して、子どもたちは「働くことの良さを考える機会となり、自分のやったことで喜んでくれる人がいることを知った」「いつかは自分に返ってくること。誰も見ていないと思っていても、ちゃんと見てくれている人がいる」など、振り返ることができました。

  今後も全教員で子どもの姿で授業を語り、振り返りをすることで、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を行っていきます。

「Agency(エージェンシー)」が発揮される学校

令和5年9月13日(水曜)

  Iot(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータの活用により、もたらされた第4次産業革命による技術革新、今まで不可能であったものが実現しつつあります。このような予測が困難な時代について数年前から「VUCA」(ブーカ)の時代に突入したと言われています。「VUCA(ブーカ)」とは、「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を並べた造語です。一言でいうと「先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態」を意味します。元々は、1990 年代頃、戦略が複雑化した状態を表す軍事用語として使われ始めたものです。それが、2010 年代からビジネス用語として定着し、市場、組織、個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味するようになりました。まさに現代は「VUCA(ブーカ)」の時代とあると言えます。学習指導要領では、変化の激しい社会を生き抜いていくために、よりよい持続可能な社会の作り手の育成が求められ、「VUCA(ブーカ)」の時代を生き抜く力を身につけさせることになります。進む少子高齢化、労働生産性の低下、グローバル化、多様性の高まり、インターネットの発達とAI(人工知能)の進歩など、社会は驚異的なスピードで変化しています。学校教育もその変化に対応しながら変化しなければなりません。

  21世紀における幼稚園から高校までの教育のスタンダードを再設計することによって、人間の能力を拡大し、集団的な繁栄をもたらすことを目指した国際的組織・研究センターCCR(the Center for Curriculum Redesign)では、21世紀の教育の要素として「知識」「スキル」「人間性」「メタ認知」を挙げています。このCCRの枠組みは、文部科学省による学習指導要領の「生きる力」を身につけるための3つの柱「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」と、「メタ認知」を除けば重なり合うものです。

  OECDは「2030年に望まれる社会ビジョン」と、「そのビジョンを実現する主体として求められる生徒像とコンピテンシー(資質・能力)」について、30を超える国の政策立案者・研究者・校長・教師・生徒・民間団体が集まり、対話を重ね、創造・協働してきました。OECDでは、コンピテンシーを羅針盤(ラーニング・コンパス)と捉え、子どもたちが、ウェルビーイングをめざして、未知なる環境の中を自力で歩みを進め、意味ある、また責任意識を伴う方法で進むべき方向を見いだす必要性を強調しています。また、OECDでは、「Agency(エージェンシー)」という言葉も重視しています。「Agency(エージェンシー)」は、「変革を起こすための目標を設定し、振り返りながら責任ある行動をとる能力」と説明され、学習指導要領で示される「主体的・対話的で深い学び」の主体的に近い概念となっています。教師と子どもの関係性が「教師から子どもへの指導」という一方向への指導では、子どもが持っている「Agency(エージェンシー)」が学校教育によって削がれてしまうことになります。保護者や仲間、教師、地域が子どもの「Agency(エージェンシー)」の感覚に影響を与え、「Agency(エージェンシー)」を発揮してウェルビーイングに向かう学びを進めることが大切です。

「ちょっとだけ」

令和5年9月6日(水曜)

  本校では子どもたちの「読書活動」の充実をめざして、保護者ボランティアによる活動が5月からスタートしています。読書ボランティアさんによる絵本の読み聞かせに、子どもたちはお話の世界に吸い込まれるように集中して聞いています。

  柳田邦男さんの「生きる力、絵本の力」(岩波書店)の「あとがき」で「子どもたちに絵本や紙芝居の読み聞かせをするときほど、楽しいことはない」と言われています。子どもたちの目がキラキラと輝いて、耳はウサギの耳のように立って、絵本の進展とともに期待感や緊張感が高まって、子どもたちの反応が刻々と伝わってくると述べられています。また、絵本は、生きることや人生や対人関係や命について、基本的に大事なことを忍ばせている表現ジャンルだとも言われています。まさに絵本の力です。絵本は子どもだけではなく、大人になっても自分の人生観を深めたり、変わったりと気づかせてくれます。「大変な時代の子どもの心」の章で「柳田邦男絵本大賞」に寄せられた手紙の紹介があります。瀧村有子さん作「ちょっとだけ」(福音館書院)という絵本に関わる話です。絵本「ちょっとだけ」は、主人公のなっちゃんに妹ができ、お姉さんになったことで感じる切なさ、そしてそれを乗り越えることで成長していく子どもの姿を、母親の深い愛情とともに描かれた絵本です。その絵本を我が子に読み聞かせをしていたときの話です。女の子が牛乳をこぼしながら「ちょっとだけ」牛乳を注げる場面で、我が子が「うわぁすごいね」と声を上げました。主人公のなっちゃんが牛乳をこぼしてしまったことにしか目を向けていなかった母親は、なっちゃんが初めて自分一人で牛乳をコップに注げたことを称賛した我が子の柔軟な見方に感動したそうです。子どもにとって、完璧でなくて「ちょっとだけ」だったとしても、できた喜びはとてつもなく大きいものだと気づかされたと。

  私たち大人は、子どもの失敗やできないところばかり目を向けがちです。それでは、子どもは自信やチャレンジする心を持つことができなくなってしまいます。この子のように初めて自分で牛乳をコップに入れることに挑戦するなっちゃんの『ちょっとだけ』の成功体験に感動する感性を身につけなければなりません。子どもの成長を見つけて喜びを感じることができる『ちょっとだけ』の成功を見落とさずに、しっかりとほめてあげないといけないと。そういう感動体験が脳に刻まれると、いずれ『自分でやってみる』という気持ちを芽生えさせることにつながっていきます。親が『だから言ったでしょ!』と、大人の持っている『こうあるべき』姿に沿わないとついつい小言を言ってしまいます。それでは、子どものチャレンジする気持ちを摘み、自己肯定感を持てない子にしてしまいます。子どもへの声のかけ方も小言からほめ言葉へ、そうすれば、ほめられた子どもはさらに大きく成長していくと思います。

ふれあい清掃

令和5年9月1日(金)

  近年、子どもを取り巻く環境が大きく変化しており、未来を担う子どもたちを健やかに育むためには、学校、家庭及び地域住民等がそれぞれの役割と責任を自覚しつつ、地域全体で教育に取り組む体制づくりを目指す必要があります。子どもたちの教育は、単に学校だけでなく、学校・家庭・地域社会が、それぞれ適切な役割分担を果たしつつ、相互に連携して行われることが重要です。家庭・地域との連携については、学習指導要領において、「学校や地域の実態等に応じ、教育活動の実施に必要は人的又は物的な体制を家庭や地域の人々の協力を得ながら整えるなど、家庭や地域社会との連携及び協働を深めること」と、家庭や地域との連携や協力、地域の資源の積極的な活用が記述されています。

  このような中、昨日、鴻池小学校地区自治協議会、PTAとも連携をして「ふれあい清掃」を実施しました。朝から曇り空で、時折日が差すこともありましたが、カンカン照りの天気でなくよかったです。今年度から「自分たちの学校は自分で綺麗にする」をテーマに5,6年生の子どもたちを中心に清掃活動を実施しました。5年生の子どもたちは、校庭の草抜きを、膝の上まで伸びた草を引っこ抜くのに一苦労しながらもみんなで協力し合いながら汗を流していました。6年生は、同じく校庭の溝掃除です。溝にたまった枯れ草や土を取り除いていくのですが、溝の中から出てくるものにおっかなびっくりで、最初のうちは「えっー」と嫌がる声も、慣れてくると、溝を掃除する子、出てきた土や枯れ草を一輪車で運ぶ子と、作業を分担しながら取り組んでいました。保護者や地域の方が子どもたちと笑顔で会話しながら作業をしている姿も見られました。曇り空とはいえ暑い中、保護者の皆様をはじめ、地域の方々にもご協力いただき、ふれあいを深め、働く喜びを味わうことができました。暑い中、参加してくださった皆さん、気持ちの良い環境で2学期を過ごすことができます。子どもたちは作業のご褒美にPTAさんからアイスキャンディーをいただき、暑さも疲れも吹っ飛んだことでしょう。ありがとうございました。