令和5年度7月【学校長の部屋】鴻池小

更新日:2023年07月28日

居心地のよい学級づくり

令和5年7月28日(金曜)

  早稲田大学教育・総合科学学術院大学院教育学研究科教授の田中博之先生が提唱する「学級力向上プロジェクト」を、学校全体で取り組むようになって2年目となります。子どもたちが学級づくりの主人公となって学級力を高めるため、自分たちの学級の様子を自己評価し、毎日の学習や遊びの中で実践的な仲間づくりを行っていく活動です。「明日も学校に行きたい」と思える学級をつくるために、教師と子どもが一緒になってこの2年間取り組んできました。取り組みの中で、自分の意見を述べるだけではなく、自分とは違う他者の意見を認めたり、取り入れたりと話し合いの大切さを理解し、自分たちで自然と話し合えるようになってきました。例えば、学習中の自分たちの授業態度を振り返って、何が今課題で、これからどのような態度で学習に臨むことが大事なのかを自分たち自身の言葉でアクションプランを考えるようになってきています。そのことによって一人ひとりが自分事として取り組むようになってきました。先生から一方的に与えられた目標ではなく、自分たちで決めた目標ということが大きく影響しています。さらには、否定的なことばかりを話し合うのではなく、よいところをさらに伸ばせるようにするためにはどうしたらよいかについても、話し合うことによって、自分たちの学級の良さに気づくこともできます。このことは、子どもたちの自己肯定感の高揚にもつながっています。教師は、子どもたちの主体的な発言や活動に対して「認め、褒め、励ます」ことによって、子どもたちを前向きな気持ちに持っていきます。

  学級のよりよい生活や人間関係づくりで大切なのは児童一人一人のよさや可能性を生かすとともに、他者の失敗や短所に寛容で共感的な学級の雰囲気を醸成することです。学級の雰囲気は、協力して活動に取り組んだり、話し合いで自分の意見を発言し合ったり、安心して学習に取り組んだりするための生活集団や学習集団の基盤となるものです。学校生活において子どもたちの情緒的安定感は、日常の授業に真剣に取り組むなど、学習への構えが備わってきます。学校は生活の場であり、様々なことを学ぶ学びの場であり、人との関わり方を学ぶ場でもあります。学級集団が形成されていなければ「主体的・対話的で深い学び」は成り立たないものです。子どもたちが自分に自信を持ち、まわりから認められる子どもたちにとって居心地のよい学級作りは、子どもたちの自己肯定感を高めるとともに学力の向上にもつながっています。

一学期終業式から

令和5年7月20日(木曜)

  一学期の終業式を迎えることができました。「まずは、やってみよう!」を合言葉に一学期頑張ってきました。一学期の始業式や5月の学校朝礼では、「ファーストペンギン」の話をしました。先生たちも教室で「まずは、やってみよう」を合言葉に取り組んでくれました。この3ヶ月あまり、子どもたちは、勇気を持っていろいろなことにチャレンジし、逞しささえ感じられるようになってきました。子どもたち一人ひとりが「笑顔あふれる学校」にするために頑張ってきた結果です。そして、子どもたちに期待した姿は、「自分から」です。「自分から」すすんで挨拶をしてくれる子、たくさんいます。校内を歩いていると「自分から」トイレのスリッパを整頓してくれる子に出会います。そんな子どもたちに出会うと、たいへんうれしい気持ちになります。授業中、教室をまわっていると学習している内容が分からなくて困っている子に「自分から」そっと教えてあげている姿や落ち込んでいる子に「自分から」声をかけてくれている子にもよく出会います。給食をこぼした友だちに「自分から」手を貸している子、けしゴムが落ちた友だちに「落ちたよ」といって「自分から」拾って友だちに渡す子。「チャイムが鳴ったよ。席に着きましょう」とみんなに「自分から」声をかける子、その子自身にとっては、何気ない行為ですが、周りの人をうれしい気持ちや幸せな気分にさせてくれています。この一つひとつの行動が「笑顔あふれる学校」へとつながっています。子どもたちが頑張ってこられたのは、一人ひとりが自分で努力をしたことはもちろんですが、家族やたくさんの友だちなどいろいろな人の支えと、先生方のおかげがあったからとも言えます。自分に関わるすべての人に感謝の気持ちも忘れてはいけません。

  さて、明日から38日間の夏休みに入ります。子どもたちに一つ宿題を出しました。それは、「『つづける』ということを一つ決めましょう」という宿題です。「つづける」というのは、毎日です。1日で片付けられるものではありません。例えば、「毎日読書をする」や「日記を書く」、「漢字の書き取りをする」と自分のためにすることでもいいです。また、家族のために「お皿を洗う」「掃除をする」でもいいです。簡単なことでいいので、欠かさず続けられそうなことを一つ夏休みの宿題に加えてくださいと伝えました。

  「お天道様」。「お天道様」というのは太陽のことです。この言葉は、人間の行いに対して「誰も見ていなくても太陽はきちんと見ているのだから、どんな時でも正直にきちんとしないといけません」という意味をもっています。お天道様がそのまま太陽を意味することもあれば、神や仏といったものの象徴として扱われることもあります。本来、人の心は弱く、誰にも見られていないと思うとついついサボったり、怠けたりと悪い方へなびいてしまいます。誰も見ていないから道にごみをポイと捨ててしまったり、勉強中、スマホに夢中になったり、「これぐらいはいいか」と誤った行動をしてしまったりした経験はありませんか。逆に、誰も見ていなくても、頑張って努力する人もいます。誰が見ていなくても、自分の心はその行動をしっかり見ています。人目を盗んでサボったりするのか、人の目がないところこそ努力を重ねるのか。結果として返ってくるのも自分自身だということも忘れてはいけません。夏休みは先生の目も届きません。家の人の目も届きにくいかもしれません。自分の弱い心に打ち勝ち、大きく成長する夏休みにしましょう。

「根っこ」を育てる

令和5年7月12日(水曜)

  生涯、子どもの側に寄り添った教育を続けられ、「日本のペスタロッチ」といわれた日本を代表する教育実践者の一人である東井義雄さん(1912~1991)の言葉に「根を養えば樹はおのずから育つ」があります。「根」は見えない部分です。でも、しっかりと樹を支えています。どんな植物でもそうですが、根がしっかりした樹木や草花は、どんな環境の中でもたくましく育ちます。美しい花を咲かせ、風雨にあっても折れない大木は、地中深くに太いしっかりした根をはって立っています。私たちはついつい目に見える部分に目が奪われがちになります。子どもを育てることでも同じです。目に見えない根っこの部分をしっかり育てていけば、どんなに厳しい状況にあっても、その状況を自分自身で乗り越え、人間として大きく成長します。焦らずにじっくりと一人ひとりの子どもに目を配り、気を配り、心配りをしながら、一人ひとりの子どもにあわせて、多過ぎず、少な過ぎず、適量の養分や水分を補給することが大切です。

  根を養えば、子どもたち一人一人は、やがて自らの力で、大地に深く根を張り、力を蓄え、自分の力で立ち上がり、未来に向かって力強く歩んでいくと思います。

  学校は、自ら学ぶ力を養い、個性を伸ばし、将来に生きて働く力の基礎・基本を学ぶ場です。家庭は、子どもたちが安心して安らげる場であり、基本的な生活習慣や人に対する思いやりなど、生き方の基礎を学ぶ場です。地域は、多様な体験をとおして社会人として必要な知識や技術を身につける場です。将来の変化を予測することが困難な時代を生きていく子どもたちのために、学校と家庭・地域がより連携を密にして、子どもたちの「根っこ」を養っていくことが大切です。

自分から

令和5年7月5日(水曜)

  この1学期、始業式を始め、折に触れてファースト・ペンギン、勇気を持って行動する人の話をしてきました。子どもたちに期待する姿は「自分から」です。

  「自分から」すすんで挨拶をしてくれる子、たくさんいます。校内を歩いていると、ごみを「自分から」拾ってくれる子、トイレのスリッパを整頓してくれる子に出会います。掃除の時間には、6年生の子どもたちが「自分から」1年生の教室で掃除の手伝いをしてくれています。そんな子どもたちに出会うと、たいへんうれしい気持ちになります。授業中、教室をまわっていると学習している内容が分からなくて困っている子に「自分から」そっと教えてあげている姿や落ち込んでいる子に「自分から」声をかけてくれている子にもよく出会います。その子自身にとっては、何気ない行為ですが、周りの人をうれしい気持ちや幸せな気分にさせてくれています。

  天台宗の開祖の最澄さんが残した言葉に「一隅を照らす」というものがあります。この言葉は、「3年B組金八先生」最終回(2011年放送)でも武田鉄矢さん演じる金八先生が生徒に向けて「一隅を照らす者になってください。一隅を照らす者は、この国の宝です。街の片隅にいても自分のいる場所をあかあかと照らす人でいてください」という台詞の中で引用しています。「一隅を照らす」、誰もが注目するような表舞台で、派手に活躍することばかりが尊いわけではありません。一人ひとりが自分の置かれた場所、家庭や学校、職場などで「一隅を照らしていく」ことこそ、私たちの本来の役目であり、それが積み重なっていくことで世の中ができ上がっていくのだということです。子どもたちの行動、一つ一つが「一隅を照らす」優しい行動です。その積み重ねが「笑顔あふれる学校」にしてくれています。1学期も残り少なくなりましたが、たくさんの子どもたちの「自分から」の行動を見つけられることを楽しみにしています。