令和4年3月【学校長の部屋】

更新日:2022年03月25日

The first penguin

令和4年3月25日(金曜)

  今日、令和3年度の子どもたちへの取り組みが終了しました。この1年、終わってみればあっという間でしたが、やっぱり長かったなと思います。とりわけ、この3学期は、オミクロン株の猛威により、約2ヶ月間、繰り返す学級閉鎖、そして、先生も出勤できないという状況が続きました。教職員一人ひとりがそれぞれの立場で力を十分に発揮して鴻池小学校を盛り上げていきました。素晴らしい職員と素直な子どもたちに囲まれ、感謝の気持ちでいっぱいです。修了式を迎え、ホッとする気持ちもつかの間、次のスタートに向けて新たな気持ちで学校としての取り組みを進めてまいります。

  さて、ある大学の広告に「Be the first penguin.挑戦を、失敗を、恐れるな。」という言葉が新聞の見開き一面を飾っていました。私自身も大好きな言葉が大きく掲載されていて目にとまりました。ファースト・ペンギン(The first penguin)とは、集団で行動するペンギンの群れの中で、魚を捕るために最初に海に飛び込む勇気ある一羽のペンギンのことです。海の中には、何があるかわかりません。そこにはペンギンの天敵、シャチやアザラシがいるかもしれません。それを恐れずに飛び込むペンギンのことをファースト・ペンギンと呼ぶそうです。

  日本でこの言葉が広まったのは、明治の初めに実業家として、教育者としても活躍をした広岡浅子さんの生涯を描いた連続テレビ小説「あさが来た」(NHK)の中で、ディーン・フジオカさん演じる「五代友厚」が、同じく波瑠さんが演じるヒロインの「今井あさ」を「ファースト・ペンギン」と呼んだのが広がり始めた最初のようです。五代友厚は、「あさ」がこのペンギンのように、変化の激しい時代でもリスクを恐れず、新しいことにどんどん挑戦する人だったので、「あさ」のことを「ファースト・ペンギン」に例えたのです。「ファースト・ペンギン」とは、挑戦や失敗を恐れずに最初に飛び込み、社会の課題を解決し、世界を変えていくような人のことを言います。

  文科省は、「2030年の社会と子供たちの未来」の中で、「子供たち一人一人が、予測できない変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要」だとしています。学校の場においては、子どもたち一人一人の可能性を伸ばし、新しい時代に求められる資質・能力を確実に育成していくことや、そのために求められる学校の在り方を不断に探究する文化を形成していくことが、より一層重要になってきます。そのためには、学び続ける教師像が強く求められるところです。教師自身が慣れ親しんだことから、失敗を恐れず、未知の場に飛び出して、果敢にチャレンジする気持ちと強い忍耐力を養っていく必要があります。何よりも高い志と、自己肯定感を持って子どもと接することが子どもの自己肯定感を醸成し、子どもの心の火をともすことにつながります。

  新たな出発に向けて、「ファースト・ペンギン」と言われた広岡浅子さんのように、失敗を恐れず勇気を持って一歩を踏み出せるように私たち教師は、子どもたちの挑戦を応援し、失敗したりつまずいたりしたときに寄り添える存在でなければいけません。

第39回卒業式

令和4年3月22日(火曜)

  日差しが日々やわらかくなり、桜の蕾も色づき始め、命の躍動する春の訪れを感じる季節となりました。去る18日(金曜)に第39回卒業式を挙行いたしました。制限のある中での卒業式となりましたが、保護者の皆様にご出席をいただきありがとうございました。

  子どもたちは晴れ晴れとした笑顔で溢れていました。小学校での6年間で色々なことを経験しながら、大きく成長しました。特に最後の一年間は、最上級生として下級生に見本を示し立派にその役割を果たしてくれました。2年ぶりのプール再開に備え、泥のたまったプールを見違えるほどきれいにしてくれました。あのときのキラキラした笑顔。体育大会『飛翔ー未来に向かってー』では、気持ちが一つに重なり合い、旗を振る音がビッシと運動場に響き渡りました。未来に向かって力強く羽ばたく姿を表現してくれました。音楽会、「学園天国」の曲は子どもたちにぴったりの選曲でした。心一つに頑張る気持ちが体育館に溢れ、さすが6年生だなと感心しました。はらはらドキドキで迎えた修学旅行、6月に予定していた修学旅行がコロナの影響で12月に、実施できたときのあの笑顔、今でも忘れられません。そして、お別れ遠足、最高の笑顔を見ることができました。最上級生として全校児童をリードし、下級生のことを気遣い、親切に接し、導いてくれました。様々な場面を振り返ったときに、自分の成長が実感できるはずです。大切なことは、頑張ってきた自分をちゃんと認めることです。頑張ればできる、それが自分への自信となるはずです。子どもたちと過ごしたこの特別な2年は、私にとっても決して忘れることできない思い出です。校長として誇りに思います。

  これから、子どもたちの前には、数々の壁が立ちはだかることでしょう。その壁を高いと感じて、「もう無理だ」「自分には、越えられない」と諦めるか、試練は、自分を成長させるものであると「よし、乗り越えてやる」と気力を奮いたたせるか、どちらを選ぶかはすべて自分次第です。水泳選手として活躍する池江璃花子さんは、自分が白血病であることを公表したとき、「神様は乗り越えられない試練は与えない、自分に乗り越えられない壁はない」と東京オリンピックで活躍する姿を見せてくれました。また、アメリカメジャーリーグで活躍した野球のイチロー選手は「壁というのは、できる人にしかやってこない。超えられる可能性がある人にしかやってこない。だから、壁がある時はチャンスだと思っている」と。つまり、どんな状況になった時でも、心の持ち方でチャンスに変えること、それを乗り越えることができるということです。壁にぶつかったときは、確かに大変です。でも「大変」とは、”大”きく”変”わるチャンスです。たとえ「大きな壁」にぶつかって「越えられない壁」のように思えても、自分の可能性を信じて、何度でも挑戦し、乗り越えていってください。大事なことは、あわてず、あせらず、あきらめないことです。きっと、強い気持ちでがんばっている姿を見れば、周りは支えてくれ、協力してくれます。それは家族かもしれません。それは友だちかもしれません。それは先生かもしれません。全ての人かもしれません。その周りの人への感謝の気持ちを持っていれば、さらなる壁も乗り越えることができます。私が大好きな卒業生一人一人の輝かしい未来をこれからもずっと応援しています。そして、鴻池小学校で「出会ったこと、笑ったこと、そのすべてにありがとう!」。

  保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。教職員一同心よりお祝い申し上げます。子どもたちは、人生において最も多感な時期に入ります。楽しみの多い反面、保護者として悩むことも多いかと思います。しかし、前向きに生きる姿が、必ず子どもたちを勇気づけます。子どもたちが「夢」に向かう姿をどうぞ温かく見守り支えてあげてください。家族の温かい支えが子どもたちの成長には欠かせない大きな力となります。私たち教職員一同、お子様の学校生活が豊かなものになるよう、一致団結して寄り添ってまいりました。しかし、ご心配やご迷惑をおかけしたことも多々あったのではないかと思います。それでも、お子様たちは優しく、逞しく成長し、卒業の日を迎えることができました。これもひとえに保護者の皆様方の、ご理解とご協力があったおかげと深く感謝しております。今後とも、信頼される学校づくりを目指し、教職員一同努力してまいりますので、これからも一層のご支援を賜りますよう、お願い申しあげます。

卒業していく子どもたちへ

令和4年3月16日(水曜)

  いよいよ卒業式が明後日に迫ってきました。お世話になった6年生のへの感謝の気持ちを込めて、5年生が中心となって全校生で6年生を送る会を実施しました。「いけいけ鴻池」のBGMをバックに各アーチの中を晴れやかな表情で歩んでいました。仲間との絆や楽しかったり辛かったりしたたくさんの思い出を胸に、在校生との別れを惜しむ会となりました。

  小学校の卒業は、今までの少年時代との別離であると同時に、新しい青年時代への出発でもあります。卒業は、大人へ近づく新たな「巣立ちの日」となります。これから希望に満ちた中学校生活がスタートします。自分の夢に向かって、中学校でしか学べないこと、中学校生活でしか体験できないこと、中学校時代だからこそ得られる友だち、一段一段階段を登っていってください。失敗を恐れることなく、少し難しいなと思うことでも挑戦していくことで、自分の成長につながります。失敗を恐れて何もしなければ、何も得ることはできません。自らの能力を信じ、謙虚さと誠実さを忘れずに自分らしく輝ける道を歩んでください。ただ、人の一生というものは誰でも嬉しいことや楽しいことばかりではありません。山あり、谷あり、上りもあれば下りもあります。時には、悲しいことや辛いこともあります。そのような時の心の糧として、山本有三作『路傍の石』、逆境にある少年吾一が誠実に生きていく姿を描いた小説の一節を卒業に寄せて贈ります。

   

卒業していく子どもたち一人一人は、無限の可能性を秘めています。その可能性を広げていくためにも、困難に立ち向かう勇気とどんな苦労も厭わない忍耐、努力を持って挑戦していってください。たった一度しかない人生、本当に輝かせることができるのは、自分自身です。自分の夢や希望の実現に向けて、生きることの素晴らしさ、命あることの喜びを味わい、自分らしくたくましく生きてください。

子どもに寄り添って

令和4年3月9日(水曜)

  読み・書き・計算に代表される基礎学力の定着は、全ての学習を成立させる上で必須のものです。基礎学力の定着を図るためには、生活・学習習慣の改善が求められるところです。さらには、「教えるプロ」として、教師の資質能力の向上に努める必要があります。

  兵庫県が基礎学力に関する課題や指導上の問題点などを明らかにすることを目的として行った「総合的な基礎学力調査」では、基本的な生活習慣が身についている児童や毎日30分以上読書をしている児童ほど基礎学力が定着している傾向にあります。また、学校の宿題に加えて予習や復習などに取り組んでいる児童徒ほど、基礎学力が定着していることから家庭と連携して生活習慣や読書習慣、自主的な学習習慣を育成することが大切であるということが明らかになりました。

  私たち教師は、「教えるプロ」としての授業改善が求められるところです。児童が、「わかりたい・考えたい」と思う手だてとして、児童の主体的な学びを引き出す「課題設定」に力を注いで研究を進めてきました。すぐには解決できない課題や、どうしても解決したくなる必然性のある課題を設定。課題に対して、児童相互で協同的に解決させ、「自分たちで解決できた」「わかった」という喜びを味わわせるための「話し合い活動」に取り組んできました。さらなる高みを求めた振り返り活動では、子ども自身に学びについて振り返らせることで、何を学び、どのように学んだのか、次にどのような学びをしたいかなど、すべての児童が能動的に学習を深めていくことのできる姿を目指して実践を進めてきました。

  兵庫県の調査では、「学校の勉強がよくわかる」と思っている児童や「やると決めたことは最後までやり通す」と感じている児童ほど基礎学力が定着している傾向にあるといわれています。いかに教師が「学ぶ意欲をはぐくむ授業づくり」に取り組んでいかなければならないと言うことです。心理学者の河合隼雄さんは、著書「河合隼雄の“こころ”教えることは寄り添うこと」の中で「学習意欲」について、第1条件は、学習する内容について教師自身が興味と関心を持っていることだと、「これは面白いぞ」と感じている人の言動は、人を引きつけると言われています。また、テストで間違った答えに対して、教師が関心をもっと持てばどうだろうとも、「どうしてそんな答えにしたの」と訊いてみると、子どもの考えがわかって、子どもと共に答えを探っていくと、子どもが興味を見いだしてくるようになると言われています。世の中には、面白い物がいっぱいあります。「面白くない勉強をしても何の役に立つの?」とならないために、まずは、教師が教える内容に興味を持って取り組み、その面白さを伝授すること、子どもと共に興味のあることに向かっていくようになれば、自然と教師の指導力も上がっていくはずです。もっともっと子どもに寄り添って!

笑顔いっぱいのお別れ遠足!

令和4年3月8日(火曜)

  6年間の小学校生活も、いよいよ終わりに近づいてきました。卒業を間近に控えた子どもたちにとって最後のビッグイベント、3月8日(火曜)に枚方パークにお別れ遠足に行ってきました。小学校生活最後の思い出を作ることを目的に例年行っている行事ですが、今年は、まん延防止等重点措置が延長され、子どもたちは「これは無理かも」と思ったことでしょう。ですが、感染防止対策を十分に施した上実施しました。バスケットコートに8時集合です。はやる気持ちを抑えられないのでしょうか早い子は7時30分には来ていました。そして、ぞくぞくと集合し始め、8時には全員が集合。先生からの注意を聞いてさあ出発です。学校からひらかたパークまでは貸し切りバスで移動。バスの中でも興奮する気持ちを抑えて、みんな静かに到着を待っていました。高速道路が工事のために使えず往きは1時間30分かかりました。それでもひらかたパークへは一番乗りでした。晴れ渡った青空のもと「いざ出発!」。フリーパス券を購入していたので、元気よく遊園地に散らばっていきました。それほど混んでいないかなと思っていましたが、意外や意外、15校の学校がきていたようで、結構賑わっていました。何度も同じ乗り物に乗っているグループや絶叫系のアトラクションばかりを選んで乗っているグループ、絶叫系が苦手で何に乗ろうかと悩んでいるグループなど、各グループ思い思いに思い出を作っていました。どの顔も笑顔がいっぱいで、私の顔を見つけると「校長先生!」と笑顔で手を振ってくれました。心配はしましたけど、子どもたちの笑顔を見ると心配もすっ飛びました。楽しいひとときは、あっという間に過ぎていき、気がつけば集合の時間です。

  今年は我慢の一年でしたが、帰り道に、子どもから「校長先生、今日は楽しかったよ」と一言、その笑顔が素敵でした。子どもたちにとって、最後に楽しい思い出を作れる行事が実施できて本当によかったです。

 

すっぱいブドウ

令和4年3月1日(火曜)

  イソップ童話に「すっぱいブドウ」というお話があります。お腹を空かせたキツネが歩いていると、美味しそうなブドウが枝から垂れています。キツネは高いところにあるブドウが食べたくて何度か飛び上がります。でも、届きません。ブドウをじっと見つめて、「あのブドウは美味しくない。酸っぱくて食べられない」と言ってそのままどこかに立ち去っていきます。このキツネの状況を心理学の「認知的不協和」(アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱)という概念で説明をすることができます。好きなのにあきらめるという矛盾が“認知的不協和”と呼ばれる不快な感情状態を喚起し、それを軽減するために好みを変化させる。キツネは、本当はブドウがほしかったのですが、自分が取ろうとしてもどうしても取れなかったので自分の力不足を認めたくないために本能的に自分の不協和を軽減したことになります。

  私たちの生活の中にも、このような行為がたくさんあるのではないでしょうか。例えば、「勉強しなければならない。でも、勉強したくない」という気持ちがあります。「勉強をしても何の役にも立たない」とか、難しい問題にぶつかると、「どうせ頭悪いし、こんな問題できるわけない」と解かない理由を考えることもあります。「宿題をしようと思ったら、急に友だちが来た」、先生から授業中「静かにしなさい」と注意をされると、「自分だけではない、みんなや」というのもあります。自分が何かできないことを、人や物のせいにする。私たちは自分の考えや行動の矛盾に気づいたとき、自分の行動を正当化するための不合理な言い訳をし、不都合な事実を覆い隠してしまおうとします。安易で一時的な不協和の軽減ばかりしていると、成長することができなくなります。

  自分の考えや行動の矛盾に気がついたら直視することです。それが良くなるチャンスです。自分のことを正当化するために「何かのせいにする」、そう言っておしまいにするのは、単なる負け惜しみです。おいしそうなブドウを見つけたら跳んでみようよ。たとえ、すぐに手が届かなくても、何度も何度も繰り返しているうちに、いつか本当にブドウをつかむことができるかもしれません。そして、つかんだそのブドウは、素晴らしく美味しいかもしれなし、酸っぱくて不味いものかもしれません。つかんで食べてみなければ、本物の味を知ることはできません。失敗を恐れない、物事をポジティブに考えられる「本当に強い人」になってみましょう。