令和4年2月【学校長の部屋】

更新日:2022年02月22日

子どもたちは先生を見ています

令和4年2月21日(月曜)

  学校教育では、いじめや偏見のない、自分らしく生きることのできる社会をめざしてLGBTについて正しく教えることが重要な時代に来ています。LGBTとは頭文字をとって組み合わせた言葉で、“L”=レズビアン(女性同性愛者)、“G”=ゲイ(男性同性愛者)、“B”=バイセクシュアル(両性愛者)、“T”=トランスジェンダー(生まれた時に割り当てられた性別にとらわれない性別のあり方を持つ人)など、性的少数者の総称です。一般的には、思春期に自分の性的指向(恋愛感情や情緒的・性的な関心がどの性別に向かっているかを示すもの)を自覚し始めます。早ければ小学生のうちに自分の性に違和感を覚えたり、自覚したりする子どももいます。

  6年生の子どもたちは道徳の時間を活用して、「LGBTQについて知り、理解を深めよう」をテーマに学習しています。授業の中では、4頭のアライグマのイラストを見て性別を答える場面がありました。「サッカーをしているから男」「女のサッカー選手もいる」「リボンをつけているから女」「女のバス運転手もいる」など、いろいろな答えが出てきました。そこで、「性別は本当に2つだけなの?」と。実は、性別は多様で、男女だけではないこと、どの性別であっても「こうあらねばならない」ということはないのだと多様な性について学ぶことになりました。大切なことは、誰もが安心して過ごすためには、性を揶揄する言動をなくすこと、誰もが居心地のよい居場所のある学級づくりが大切です。

                              

  「LGBTの子どもたちは、誰が信頼できる大人であるかしっかり見ています。この先生ならば自分のことをわかってくれるだろうと信じて、期待して、本当の自分の話をすることでしょう。学校での取り組みや先生のさりげない一言が、彼らの人生を変えることになります」。これは、宝塚大学看護学部 日高庸晴教授が代表をされている厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業 「子どもの“人生を変える”先生の言葉があります」から抜粋したものです。性的マイノリティの子どもが自分の周りにいないのではなく、言えずにいる子がいる、生きづらさに直面しているかもしれないという想像力を持って取り組まなければなりません。まずは、違いを認め合い、自分らしさを大切にできるような学級経営や多様性を認め合うことにつながる教師の言動などの素地づくりが不可欠です。

教師の言葉

令和4年2月18日(金曜)

  北京オリンピック第14日、スピードスケート女子1000mで高木美帆選手が五輪新記録を出して金メダルに輝きました。2月18日の毎日新聞の一面に、「コーチ言葉 弱気払う」という記事がありました。その記事になるほどと感銘を受けたので紹介をします。金メダルを獲得した高木選手は、「全てを出し切ることができた。正直、体は限界だったが、無事に走り切れて良かった」と語っていました。その活躍の陰には、高木美帆の恩師とも呼べるほど信頼を寄せているヨハン・デビット・ヘッドコーチがいた。ただ、デビッドHCの北京入りは、コロナウイルス感染が判明したために日本チームとは離れ、隔離生活を余儀なくされていました。世界記録を持ち本命と位置づけていた1500mのレースでは、デビットHCは不在の状況だった。デビットHCが13日に復帰した後、「肩に力が入っているぞ」と声をかけられてから、高木選手は、専門外の500mで銀メダルを獲得し、重苦しいムードを振り払い、勢いを取り戻します。レース後に「いつもヨハンがそばにいたので、ふとしたときにかけられる言葉が急になくなった期間はしんどいものがありました」と語っていました。デビットHCは、高木選手の弱気な言葉を聞き逃すことなく、「お前は何でそうなんだ?俺だったら『同じ人間ができているんだったら自分もできる』と思う」と、この言葉をきっかけに高木選手は、自らの可能性を信じ、限界を超えていくようになりました。(2月18日の毎日新聞一面「コーチ言葉 弱気払う」より)

  以前にも紹介をしましたが、2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野明さんも、先生の何気ない一言「化学は面白いよ。物が化けるから『化学』なんですよ」が化学に興味を持つきっかけを与えてくれたと語っています。私たちは、子どもの人生に大きく影響を与えるような仕事をしています。子どもたちは先生から向けられた言葉を無意識に蓄積していきます。先生は子どもたちの言葉を育て、心を育む大きな存在です。子どもたちから「ああ、この人は私の先生だ」と思われる存在にならなければなりません。少し長いですが、「心に響く小さな5つの物語」(藤尾秀昭:著(致知出版)P60~73 引用)を紹介します。

オンライン参観・懇談会

令和4年2月17日(木曜)

  兵庫県の「まん延防止等重点措置」が3月6日まで延長となりそうです。また、第6波はピークアウトしたという報道もありますが、まだまだ楽観できません。期間中は、感染症対策を講じてもなお感染のリスクが高い学習活動、子どもたちが長時間、近距離で対面形式となるグループワーク等や近距離で行う合唱及びリコーダーや鍵盤ハーモニカ、調理実習、密集する運動などの教育活動が制限されています。

  学校としても、まん延防止等重点措置が適用されてから、子どもたちの下校後にトイレや手洗い場など、共有する場所については、これまで以上に念入りに消毒を行っています。子どもたちの学びを止めないよう、今こそ皆の力を結集して取り組むときです。

  2月の授業参観・懇談会が来週に控えていますが、1月の「オンライン参観」に引き続きになりますが、新型コロナ感染拡大防止策として、感染状況に対応した教育活動を行うため「オンライン参観・懇談会」として実施します。少しでも保護者の皆様に子どもたちのがんばっている様子を届けようと教職員もがんばっています。また、授業参観後に行われる予定であった学級懇談会も昨年度から実施することができていませでしたが、学校と保護者が話し合う貴重な場であると考え、オンライン参観同様、オンラインで学級懇談会を行います。ZOOMによるものとなりますが、1年のまとめの会にしたいと思っています。学級での取り組みや子どもの成長など、エピソードを交えながらお話ができればと考えています。様々な制限がある中での学校生活が続きますが、今後もオンラインやICTを活用しながら、よりよい学習環境を作っていくために挑戦していきます。そして、一日も早くマスクなしで気兼ねなく学習できる日が来てほしいと心から願います。

「デジタル」と「リアル」

令和4年2月9日(水曜)

  2月7日、末松信介文科相は、2023年度から27年度までの5年間で取り組む教育分野の重点施策を定める政府の第4期教育振興基本計画の策定について中央教育審議会に諮問しました。諮問では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、休校や対面授業の中止が相次ぎデジタル機器を用いたオンライン教育やAIなどを活用した学習教材などが子どもたちの学びを支える機会となったと指摘しています。一方、学校の持つ福祉的機能や、共に関わりながら学び成長する、オンラインでは経験し得ないリアルな体験の価値について再認識する契機になったとも指摘していました。将来の予測が困難な時代に向け、歴史の転換点に立っているとの認識を前提として策定する必要を強調し、今後5年間に教育政策が目指すべき方向性として、「デジタル」と「リアル」の最適な組み合わせを議論する必要があるとしています。

  新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、先生たちは子どもたちの学びを止めないためにICTと学習支援ソフト「スクールタクト」を活用するオンライン授業・学習に取り組みました。はじめての取り組みで戸惑いながらも授業を配信する姿をたくさん見ることができました。今では、休んでいる子どもたちのために少しでも学習の支援になるよう普段の授業を配信する様子が当たり前になってきました。中には、画面の向こうにいる子どもたちに語りかけている姿も見られるようになってきました。確実に、デジタル機器を用いたオンライン教育が進みつつあると言えます。

  一方、「地域のお年寄りの方からも昔話を聞いたり、昔の遊びを教えてもらったりしている活動」や「大自然の中での体験的な活動を通して豊かな心や生きた学力を身につける自然学校」、「自然の不思議さやおもしろさを発見する環境体験学習」、「交流を通して、相手を思いやる心の大切さや協力することの大切さを学ぶ異学年交流活動」など、「リアル」な直接体験活動は子どもたちの成長にとってなくてはならない活動です。コロナ禍の今では制限がありできないこともあります。歴史の転換点、教育の在り方の転換点、「デジタル」と「リアル」の最適な組み合わせがどのようなものになるのか、また、私たち教職員はどのような教育の姿を求めるべきなのかを考えるターニングポイントにきています。

「ある」ものに自信と誇りを

令和4年2月3日(木曜)

  あっという間に1月が終わり、今日は節分です。節分は「立春」の前日にあたりますが、立春は暦の上で春が始まる季節のことです。今日で冬が終わり、明日から新しい季節が始まる区切りの日です。今年度も残すところ2ヶ月です。1年生から5年生は学年として、6年生は小学校生活の総決算をするわけです。一人一人の願いや希望の達成はもちろんですが、学校全体として、「充実した1年を終えることができた」と胸を張って言えるような3学期にしなければなりません。

  子どもたちは、様々な学校行事を通して、または活動を通して「鍵盤ハーモニカが吹けるようになった」「考えが言えるようになった」「努力が報われた」「友だちの絆が深まった」「学級がまとまった」など、たくさんの宝物を手に入れたことと思います。しかし、私たちは、ともすれば身近にある大切なものに気づかなかったり、そのありがたさがわからなかったりします。私たちは、「ある」ものには鈍感で、「ない」ものには敏感です。「〇〇がない」「◯◯もない」「〇〇もしてもらえない」ないないづくしです。家に帰ると食事があり、寝る布団があり、家族がいても「ないもの」の方へ目が行きがちです。家族とのやりとでも「〇〇してくれない」などといってしまいがちです。1年間の総まとめをするこの時期、是非、この一年を振り返って、手に入れたたくさんの宝物、家族、友だち、先生などにしてもらって「うれしかったこと」を思い浮かべてほしいと思います。そして、自分にしてくれた人に対して「して返したこと」には、どんなことがあるかを考えてほしいと思います。たくさんのことを思い浮かべることができる人は、今度は人に対して「自分ができること」をできるだけたくさん書き出し、一つ一つを着実に実行してください。なかなか思い出せない人は『くれない族』になっていないか、振り返り、まわりの人の名前を書き出し、これまでどんなやり取りがあったかを思い返してください。「ある ある ある」。きっとたくさんの宝物が見つかります。見つからなかった人にとっては、この残りの2ヶ月で「やってくれない・認めてくれない」というような「くれない」が口ぐせの『くれない族』から『する族』へチェンジするときです。さあ、チャレンジしていきましょう。