令和3年12月【学校長の部屋】
子どもの心に火をつける
令和3年12月23日(木曜)
いよいよ明日は2学期の終業式です。今年度も通常の教育活動において様々な変更を余儀なくされましたが、それでも2学期は、体育大会や音楽会、遠足、社会見学、6年生の子どもたちにとっては最高の思い出となった修学旅行など、その時にできる範囲の中で最大限の工夫と配慮をしながら実施することができました。様々な活動を通して子どもたちの心身を成長させるものとなりました。明日、子どもたちは「のびる力」を持って帰ります。「のびる力」には、教科の成績だけではなく、所見欄には、先生方の思いのこもった言葉が書かれています。この「のびる力」を子どもたちに渡すとき、先生たちは、一人一人にがんばったことや励ましの言葉をかけながら渡します。それは、子どもたち一人一人が次の意欲につながればと願うからです。ご家庭でも子どものできているところに目を向けてほめてあげてください。
「教育は人なり」と言われます。教師は子どもたちにとって最大の環境です。教師の言葉づかいやあいさつ、行動など、毎日の学校生活の中で、子どもたちは無意識に模倣し、身につけていくことになります。よい教育のためには、優れた人格を伴った指導力を持つ教師が不可欠であると言えます。だから私たち教師は、日々研鑽し、人として、また指導者としての資質を高めていかなければならないのです。
2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野明さんが子ども時代をふり返って、化学に目覚めた子ども時代のエピソードを話されています。化学に興味を持つきっかけを与えてくれたのは2年間自分を担任してくれた新任の先生だそうです。小学校3年生の時に先生が「化学は面白いよ」「物が化けるから『化学』なんですよ」などと楽しそうに話してくれたそうです。また、4年生の時には、ファラデーの本「ロウソクの科学」を薦められ、夢中で何度も読んだそうです。これが化学への興味の始まりだったと吉野さんが話されています。先生の何気ない一言が子どもの心に火をつけたのです。それだけ、私たちは、子どもの人生に大きく影響を与えるような仕事をしていることにもなります。教師として子どもの心に点火できるだけの火をもち続けられるよう、教師自らが学び続けることです。自らが学ぶことの面白さを感じることで、子どもたちに新しい情報、知識とともに学ぶ喜びを伝えることができます。教師自身が学ぶ楽しさを実感していないところに、子どもが学ぶ楽しさを実感するはずがありません。新しい年を迎えるにあたり、心新たに、子どもの心に火をつけられる情熱ある教師でありたいものです。
目配り、気配り、心配り
令和3年12月22日(水曜)
「おはようございます!」と満面の笑みを浮かべてあいさつする子どもたちは、鴻池小学校の宝物です。この一声に「よし、今日もがんばるぞ」と清々しい気持ちにしてくれます。
学校教育目標に掲げる「笑顔があふれる学校」の「笑顔」とは、単なる笑いではなく、子どもたちの内面からあふれ出る笑顔、「勉強が分かった」「できなかったことができた」といった達成感や「認められた」「ほめられた」といった充実感からにじみ出てくる「笑顔」のことです。子どもたちが「学校って楽しいな」「明日も学校に行きたいな」と、安心して通える学校づくりに全教職員で取り組んでいるところです。
子どもたちにとって安心して過ごせる学校となるためには、常に目配り、気配り、心配りをしていきたいものです。目配りとは、「いろいろなところに、注意を行き届かせること」です。子どもの様子をきちんと見ていないとわかりません。細かい点まで注意を向けると、子どもの顔色が悪いなら「体調が悪いのだろうか」と推察することができます。何気なく見ていると見落としてしまう、些細な行動や変化にもいち早く気づき、子どもの安心につながります。気配りとは、「少し先を考えること」です。子どもが次にどのような行動をするのかを察知し、行動することが気配りです。子どもが少し暗い顔をして、ため息をついていたら、「どうしたの?」と声をかけてあげると、心を開いてくれるかもしれません。ちょっとした声かけが子どもをうれしい気持ちにさせてくれます。最後の心配りとは、「あれこれと気をつかうこと。心づかい。配慮」です。心配りと気配りはよく似ていますが、子どもの立場になって考えて行動するのが、「心配り」です。子どもの悩みを聞いたり、共感したり、一緒に苦しみを分かち合ったり、子どもが笑顔になることを想像して行動することです。
「目配り、気配り、心配り」の三配りは、どれも人として大切なことです。優しい人になれるよう視野を広げて、注意深く見ることから始めてみたいものです。
「カモメになったペンギン」から
令和3年12月15日(水曜)
「カモメになったペンギン」(ダイヤモンド社)の紹介です。著者は、ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授ジョン・P・コッターです。コッター教授は、リーダーシップ論の第一人者として、変革の時代に必要なものはリーダーシップである点を強調しています。そして、リーダーシップにおける最も重要な要素を「リーダーの掲げるビジョン」であるとし、変革を実現するための変革の八段階を提唱されています。その実践をわかりやすく描かれたのが寓話風に書かれた「カモメになったペンギン」のお話です。お話を簡単に紹介します。ペンギンたちが暮らすコロニーの中で氷山が溶けてきて、今にも崩れそうだという危機が迫っていることを発見します。変化を嫌い、現状に甘んじるコロニーのペンギンたちに、事実を伝え、理解をしてもらおうとしますが、なかなか理解が進みません。それどころか、反対す者まで。現状の危機を乗り越えるために志を同じにする5羽のペンギンが変革しなければこの危機を乗り越えることができないとプロジェクトチームを発足します。しかし、救済策を講じてもそう簡単にはすすみません。5羽のペンギンが生き残りかけた変化に挑みます。5羽のペンギンが中心となって仲間たちを導いていく過程を描く物語です。
リーダーシップには、人々を困難な目標の達成へと駆り立てる力が必要です。変革に関わる目標達成が現在ほど困難な時代はなかったでしょう。移り変わる時代の中で八段階の変革プロセスを利用すれば成功が手にできると。自分にとっての「氷山」とはいったい何か?この難局を乗り越える仲間は誰かと考えながら読むことができました。
変革を成功させる八段階のプロセス
【準備を整える】
1 危機意識を高める
2 変革推進チームをつくる
【すべきことを決定する】
3 変革のビジョンと戦略を立てる
【行動を起こす】
4 変革のビジョンを周知徹底する
5 行動をしやすい環境を整える
6 短期的な成果を生む
7 さらなる変革を進める
【変革を根づかせる】
8 新しい文化を築く
教科担任制
令和3年12月10日(金曜)
兵庫県では、平成13年度から個に応じたきめ細かな指導や心の安定を図り、多面的な児童生徒理解に基づく指導など、児童生徒の個性や能力の伸長を図ることを目的とした「新学習システム」が始まりました。その後、平成21年度から「兵庫型教科担任制」の指導システムを導入し、全小学校で平成24年度から取り組みが始まりました。高学年においては、少人数授業とともに、教科担任制をこれより実施することとなりました。実施にあたっては、国語、算数、理科、社会から教科2教科以上を選択し、学級担任による交換授業を実施しています。小学校のこれまでの学級担任制においては、教える教科が複数のため、十分な教材研究や授業準備を行う時間が足りないといった問題点や、学級担任による指導に不適応をおこす児童があり、短時間では関係の改善が難しく、学習や生活面においても影響を及ぼすといった問題点の他、中学校からはじまる教科担任制になじめず、不適応を示す児童など、子どもにとっても中学校へのスムーズな接続がなされていなかったなどの問題点がありました。教科担任制を実施することで、これらのことが全て可能になるとは言い切れませんが、様々な配慮を要する児童への対応など、複数の目で児童を見ていくという意識の高まりは生まれてきます。
今年度実施しました5,6年生の教科担任制についてのアンケートでは、「授業が楽しい」と思う児童が82.9%、「授業がわかりやすくなった」が90.8%と多くの児童が肯定的な回答をしています。また、自由記述では、「いろいろな先生と関わることで授業が楽しい」、「教科担任制になって授業がわかりやすい」、「先生が代わるたびに気持ちを切り替えられる」、「担任の先生以外にもよく話ができるようになった」、「国語も算数もわけてほしい」など、肯定的な意見が大半を占めていました。教師アンケートでは、「教科によって教員が代わることは児童にとってよい」と考える教師は100%、「生徒指導上の問題を学年で対応できる」が88.9%、「学級担任制より教科担任制が時間的余裕ができた」88.9%と、教師の側でも肯定的な回答が見られました。児童同様、自由記述では、「学年の子どもを学年で見ることができ、子どもたちにとってもよい」と肯定的な意見がある一方で、「行事や天候等により時間割変更が難しい」、「担当する教科によって負担に差があるため、学年の仕事などを分担する」など、課題と解決策の意見もありました。
教科担任制の本格実施に向けて、先生方の時間と心のゆとりが増え、児童によりよい教育ができることを願います。
異学年交流
令和3年12月1日(水曜)
11月24日(水曜)、1年1組と6年1組、1年2組と6年2組が、30日(火曜)には、1年3組と6年3組が交流会を実施しました。コロナ禍の今年、なかなか子ども同士が触れ合う機会をもつことができなかったのですが、1年生と6年生がようやく交流会をもつことができました。6年生は、1年生と仲良く、そして楽しんでもらうために話し合いを進めてきました。話し合いの結果、それぞれの学級単位で交流会を企画することとしました。射的やボーリング、輪投げ、ストラックアウトなど、手作りゲームで1年生を楽しませる学級や鬼ごっこやけいどろ、どろだんご作りで楽しませる学級、わくわくさんの工作教室で1年生と射的やロケットをつくって遊ぶ学級と、それぞれの学級が1年生のことを考えて、自分たちで企画をしたものです。全ての6年生が1年生のことをかわいいと思って、嬉々としてお世話をするわけではありません。中には、「1年生なんてかわいくない」「めんどくさい」という子もいます。だからこそ、子どもたちに企画させることが大事だと思います。子どもたちに「自分が1年生を引っ張っていく」という責任が生まれてきます。「先生から言われたから交流会をやる」の教師主導では、やらされ感が先行し、子どもたちに達成感も自尊感情の高揚もあったものではありません。教師の役割は、子どもたちにどのように企画すればいいのかヒントを与えながら、企画運営できるよう導いていくことです。
異学年交流には、子どもたちの心を成長させるとても大きな力があります。今回の交流会では、各学級、1年生が楽しめるような工夫をして、1年生にていねいに説明したり、優しく声をかけたりするなど、「自分がみんなを引っ張っていく」という責任感や思いやりが感じられました。一方、1年生にとっては、活動を通して、「自分もあんなことができるようになりたい」というリーダーになることへの憧れの姿が見ることができました。きっと6年生を「頼もしい存在だな」と思ってくれたことでしょう。6年生の子どもたちは、1年生との交流を通して、1年生の喜ぶ姿を見たり、1年生からお手紙をもらったりして、自分たちのやっていることに「まんざらでもないな」と感じたことと思います。1年生のお世話をかいがいしく行ってくれた6年生。そんな6年生に愛らしく甘えている1年生。どちらもニコニコ笑顔で優しい表情をしていました。異学年交流を通して、自己有用感をはじめとする豊かな心情が育まれることを願います。
更新日:2021年12月23日