令和3年7月【学校長の部屋】
出口のないトンネルはない
コロナ禍、東京オリンピック2020が開催されています。連日、テレビに釘付けです。開幕1年前、競泳選手の池江璃花子さんが国立競技場でアスリートの代表としてメッセージを発信しました。「世の中がこんな大変な時期にスポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよく分かります。ただ、一方で思うのは、逆境からはい上がっていく時には、どうしても、希望の力が必要だということです。希望が、遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくても、前を向いて頑張れる、1年後の今日、この場所で希望の炎が輝いていてほしい」とメッセージを送りました。あれから1年、それぞれの困難と戦ってきた選手たちが東京に集結しました。「出口のないトンネルはない」という医師の言葉を胸に東京オリンピックに出場。コロナを経験し、トンネルの先に待っているのは、諦めていたはずの大舞台。奇跡のストーリーが再び幕を開けた。池江選手は、「リオもそうだったけど、入場した瞬間、『こんなにキラキラした会場は見たことない』と、不思議な感覚に包まれた。オリンピック独特の高揚感を胸に、引き継ぎ記録ながらチーム最速の53秒63で泳いだ。400メートルリレーの第2泳者として泳ぎ終わって「この舞台でこのメンバーで戦えて、楽しかったか、と言われたら、すごく楽しかったです」と、また、「悔しい気持ちも、ものすごく強いので、まだレースも残っていますし、それにむけて気持ちを切り替えて頑張りたいと思います」とも話した。どんなトンネルにも必ず出口はある!コロナを経験し、乗り越えた先には、また一歩成長した自分がいる。仲間がいる。そして、一人じゃなく仲間と乗り越えると。昨日行われた競泳混合400メートルメドレーリレーで決勝進出を逃した池江選手でしたが、泳ぎ終わったあとのさわやかな笑顔が印象的でした。
United by Emotion
令和3年7月28日(水曜)
世界トップレベルの選手たちによる熱戦が連日繰り広げられている「東京オリンピック」。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって世界中の人たちの心がマイナスに暗い方向に傾きがちな中で、選手たちが自らの限界に挑む姿は私たちに夢と感動を与えてくれます。27日には、ソフトボール決勝、2対0でアメリカに勝って優勝が決まった瞬間、選手たちの歓喜の輪ができました。13年前の北京大会以来となる金メダルを獲得しました。興奮冷めやらぬ中、最後を締めくくった上野由岐子投手へのインタビューで、今後のソフトボール界にもつながる「金」になるかの質問に、「13年という年月を経て『最後まで諦めなければ夢はかなう』ということを、たくさんの方々に伝えられたと思う。ソフトボールはまた次回からなくなってしまうが、また、諦めることなく前に進んでいけたらと思う」と、アスリートとして、覚悟を決めて臨んだオリンピック、「喜びは一瞬。その一瞬のためにアスリートは365日努力をする」の言葉が表すように、この13年間、この一瞬のために努力を続けてきたことに、感動させられました。本当に感動をありがとうという気持ちです。
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は、オリンピックとパラリンピック共通の大会モットー「United by Emotion」(※感動で、私たちは一つになる)を掲げています。大会モットーには、国籍や民族、人種、性別、文化、宗教、障がいの有無など、多様な人々と時間と場所を共有します。そして、スポーツを通して、大勢の人々が様々な感情や感動を体験します。共感できると嬉しいし、異なる感情であっても理解できるのだという貴重な体験。まさにスポーツの力といえます。人は、感情や感動で繋がって初めて、壁の向こうを想像し、互いを認め合うことができます。集まった人間が「Emotion」で繋がること。それが、「United by Emotion」というモットーに込められています。まだまだ続く、東京大会、たくさんの「Emotion」を味わいたいと思います。
※United by Emotionの参考和訳。大会モットーは英語のみの表記。
シェークスピアの四大悲劇
令和3年7月26日(月)
1学期の終業式も終え、子どもたちが楽しみにしている夏休みがスタートしました。終業式では、子どもたちにコロナ禍、給食をみんなと一緒におしゃべりしながら食べられなかったこと、マスクを外して思いっきり遊べなかったこと、思いっきりプールで泳げなかったことなど、様々な制限がある中、良く頑張ったことを伝えました。でも、このようなとき、できないことに対して嘆くより、今何ができるか、そして、どう工夫し、考えればいいのかを先生達と子どもたちが一緒になって取り組んできた1学期でした。だからこそ、1学期に様々な活動を可能にすることができたと思います。「1年生を迎える会」「ヤゴ取り」「春の遠足・社会見学」「アイマスク体験」「出前授業」「自然学校」など、1学期の活動について、写真を見ながら振り返りました。そして、夏休みには、「東京オリンピック・パラリンピック2020」が開催されます。大会ビジョンは、「スポーツには、世界と未来を変える力がある」です。大会を成功させて、今のコロナ禍による疲れ切った世界と未来を大きく変えてほしいと願います。
また、終業式の後の職員会議では、コロナ禍の状況について、イギリスの劇作家、シェークスピアの四大悲劇、「リア王」、「マクベス」、「ハムレット」、「オスロー」を通して、先生方に話をしました。「リア王」では、「これが最悪などと言える間は、まだ実際のどん底ではない」と、私たちの夢や希望がなくなったわけではありません。「マクベス」では、「明けない夜はない」にあるように、悪い状況がずっと続くことはない、いつかは必ずよいことがある、必ず希望の朝日が昇ってきます。「ハムレット」では、「不幸というのは、単独では来ない、大軍でやってくる」、「弱り目にたたり目」ではないけれども、災いは重なってやってきます。しかし、決して恐れることはないと。最後に「オスロー」では、「万策尽くれば、悲しみも終る、事態の最悪なるを知れば、もはや悲しみはいかなる夢をも育みえざればなり」と、どん底を味わえば、それより最悪になることはありません。後に残ることは希望のみと、シェークスピアの四大悲劇を通して、夢と希望を持って、皆でやっていきましょうと伝えました。
マネジメントとリーダーシップ
令和3年7月19日(月曜)
マネジメントという英単語を直訳すると「管理」「経営」「運営」という意味になります。このマネジメントという言葉が、はじめて使われたのはピーター・F・ドラッカーの著書『マネジメント』の中でした。その中でドラッガーはマネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。
マネジメントとリーダーシップは、いずれもめざす方向性は同じですが、まったく同義ではありません。ドラッカーは、「未来企業」の中で「リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定めて、それを維持する者である」と、ドラッガーは、効率のよいマネジメントと効率のよいリーダシップを区別していないところです。一方、マーカス・バッキンガムは著書「最高のリーダー、マネージャーがいつも考えているたったひとつのこと」の中で、「リーダーシップもマネジメントも組織の継続的な成功にとって重要である。しかし、リーダーの役割とマネージャーの役割は100%異なる。責務が違う」と述べています。では、何がどう違うのでしょうか。
バッキンガムは、マネージャーの出発点は部下一人一人の才能、スキル、経験、目標といった要素を観察し、それをもちいて彼らが成功できる将来計画を立てること、部下一人一人の成功に専念することと述べています。そして、リーダーについて、リーダーの出発点は、自分が描く未来のイメージだと。よりよい未来こそ、リーダーが語り、考え、反芻し、計画し、練り上げるもので、このイメージが頭の中ではっきりした形をとって、はじめてリーダーは周りの人々を説得することだと。例えば、1960年、ニクソン副大統領とケネディ候補の大統領選の討論会で、「アメリカの経済成長が世界の先進国の中で最低だったことに、私は不満を覚える・・・」など、ケネディは「私は不満を覚える」と、同じフレーズを繰り返しました。現状に満足することのない姿勢こそがリーダーの信条であり、よりよい未来を見ることができる。「現実」と「可能性」の衝突がリーダーを燃え立たせ、奮起させ、前進させています。これこそがリーダーシップだと。
中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(2015年)の答申で「チームとしての学校」を実現するために、「多様な専門性を持った職員を有機的に結びつけ、共通の目標に向かって動かす能力や、学校内に協働の文化を作り出すことができる能力などの資質」、マネジメント能力が求められるとし、学校の教育活動の質を高めるためには、教育指導等の点で教職員の力を伸ばしていくことができる教育的リーダーシップが重要であるとしています。管理職として、「チームとしての学校」の実現に向けては、ドラッガーがいうように、強い力で組織を統率し変革していくタイプのリーダーではなく、ミッションやビジョンの達成に向けて、必要な人材、組織を適切にマネジメントできるリーダーが求められているということになります。
学校組織マネジメントって
令和3年7月15日(木曜)
文部科学省組織研修カリキュラム等開発会議において、学校組織マネジメントについて、「学校の有している能力・資源を開発・活用し、学校に関与する人たちのニーズに適応させながら、学校教育目標を達成していく過程(活動)」と定義しています。私たちが進むべき方向を示すミッション(使命・存在意義)とビジョン(目指すところ)の達成に向けては、教育活動の計画(Plan)、実施(Do)、評価( Check)、改善(Action)によるマネジメント・サイクルによって一定の成果を得、効率化を図ることができます。中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」(1998年9月21日)では、学校組織の見直しについて、「各学校の自主性・自律性の確立と自らの責任と判断による創意工夫を凝らした特色ある学校づくりの実現のためには、人事や予算、教育課程の編成に関する学校の裁量権限を拡大するなどの改革が必要です。また、学校の自主性・自律性を確立するためには、それに対応した学校の運営体制と責任の明確化が必要です。このため、校長をはじめとする教職員一人一人が、その持てる能力を最大限に発揮し、組織的、一体的に教育課題に取り組める体制をつくることが必要であり、このような観点から学校運営組織を見直すことが必要です」と書かれています。この答申以降、学校の組織としてのあり方について、教職員の同僚性を基底に学校の組織力を高めることの重要性やチームとしての学校の重要性が問われるようになりました。
国士舘大学教授の北神正行先生は、学校組織マネジメントの目的について、児童生徒の確かな成長を保障することであり、そのために質の高い教育を提供することとしています。そして、学校組織マネジメントは、教育課程、生徒指導から人材育成に至るまで学校運営に与える要素・要因の全てが対象となり、校長や教頭等の管理職だけが取り組むものではなく、全教職員で取り組んでいくものとしています。さらに、学校組織マネジメントの3つの視点として、「変える」、「見つける」、「つなぐ」の視点をあげています。「変える」、教職員一人一人が変化に対応し、「変える」ことの必要性を理解し、難しさを克服して、学校を変える主体としての役割を果たす必要があります。「見つける」、どの学校にも「強み」「弱み」があります。「弱み」に目が行きがちですが、あえて「強み」に目を向け、「強み」を活かす方法、「弱み」を「強み」に変える方法を工夫する必要があります。最後に、「つながる」、一人の頑張りだけでは、学校は支えられなくなっています。個に頼るのではなく、組織として持てる力を最大限に発揮していかなければなりません。
リフレーミング
令和3年7月9日(金曜)
リフレーミングという言葉を聞いた人もあるかもしれません。この言葉は、心理療法の技法の一つで、物事の見方や捉え方を変える技法のことです。これにより、不満や不足といった感じ方を、満足や喜びといった感じ方に変えられるというものです。同じ物事でも、考え方によっては長所にも短所にもなります。例えば、コップに半分まで水が入っているのを見て、「もう半分しか水が入っていない」と捉えるか、「まだ半分も水が入っている」と捉えるかで印象は大分異なります。「もう半分しかない」と捉えると悲観的に感じられますが、「まだ半分もある」となると楽観的になります。さらに、「まだ半分もある」には、新たに何かを成し遂げることができるような気がします。できることなら、子どものやる気を引き出すような言葉がけをしてあげたいものです。「優柔不断」と言われると、一般的には、短所と考えられがちですが、見方を変えれば、物事に対して「慎重」に考えて進めることができるという長所に捉えることもできます。また、「あきっぽい」性格の人は、「決断してすぐ行動できる」という長所に捉えることもできます。
つまり、同じ特徴であっても捉え方がかわれば長所にも短所にもなるということです。リフレーミングを活用することで、自分の良さに気づいたり、自分の短所も自分の一部だと受け入れたり、自分を理解したりすることができます。自分に自信がもてない、メンタルが弱いなど、自尊心が低い子には、自分の強みを見つけ、自尊感情を高める方法の一つとなることでしょう。世の中には、短所のない人なんていません。「長所と短所は紙一重」です。切り離すことのできないものですから、ネガティブに短所を短所と考えるより、ポジティブに短所を長所と考える方が人生は楽しいものです。
もうすぐ、長い夏休みが始まります。子どものいろいろな面が見えてくると思いますが、リフレーミング(視点を変える)で子どもの自己肯定感を高めていきましょう。
水泳学習が始まりました
令和3年7月6日(火曜)
5年生は6月30日(水曜)から、その他の学年の子どもたちも5日(月曜)から、子たちが心待ちにしていた水泳の授業が2年ぶりに再開することができました。待ちに待ったプール開きに子どもたちは歓声を上げることはできませんが、うれしそうな元気な姿がプールに戻ってきました。私たちにとって、学校にプールがあって、水泳の授業があるということは、ごく当たり前のことですが世界的には珍しいことみたいです。日本の公立小学校のプール設置率は、86.7%と高い数値が示しているように、日本では、1955年から本格的に水泳の授業が採用されるようになり、現在では、水泳の授業が必修となっています。水難事故から身を守るために泳ぎを習得することなど、水泳学習は重要な役割を果たしています。
最近では、老朽化した学校のプールを改修・新設せず、公営や民間の屋内プールでの水泳指導に切り替える自治体が出てきているようで、学校プールの廃止や授業自体をなくす自治体も出てきているようです。また、試験的に民間のスイミングスクールの利用とスクールの指導者による授業を始めている自治体もあります。
水泳の授業は、水の中で活動することの楽しさや快適さを与えると同時に、子どもたちの体力や泳力、運動能力の向上を図るものでもあります。また、水の危険性から身を守る力をつけさせるなど、大切な活動です。今年度、短い期間ではありますが、子どもたち一人一人がめあてをもって、水泳が好きな子どもたちが増えることを願います。そして、何よりも安全に気をつけて取り組みましょう。
更新日:2021年10月25日