令和3年5月【学校長の部屋】

更新日:2021年10月25日

前を見つめて

令和3年5月27日(木曜)

 毎年、全国の小中学校や高校などを対象に行われている「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」。2019年度の調査でもいじめの認知件数の増加、暴力行為の発生件数の増加、不登校児童数の増加などが報告されました。児童の問題行動等の未然防止,早期発見・早期対応、また、不登校児童への適切な支援につなげていかなければなりません。

 それぞれの学級の子どもの顔を思い浮かべたとき、3,4人の困り感をもった子どもの顔を思い浮かべることができます。その子どもたち、どう寄り添って学級での生活や活動を進めていけばいいのか、皆で共有する研修を実施しました。

 子どもたちは、様々な場面で自分のカだけでは解決できない課題を抱えていることがあります。学級の中で友だちとの関わりを通して、経験知を生かしながら解決することができる子どももいます。でも、自分でどうしていいのかわからず、学級になじめず困り感を抱いたまま生活している児童がいるということを共有し、その子どもの学級での居場所づくりをどのようにしていけばいいのか、情報を共有しました。引き続きの人権研修では、「自尊感情」をテーマに、それぞれの学級が取り組んでいる「自尊感情を高める取り組み」について、スクールタクトを使っての研修です。「自尊感情」の高揚は、今年度、本校での一番の課題と言ってもいいでしょう。子どもたちの自尊感情を高めることで、笑顔あふれる学校にしようとみんなで取り組んでいるところです。その課題解決に向けて皆がベクトルを同じ方向に向けて取り組んでいることにまず喜び、先生方一人一人の取り組みに驚嘆させられました。「子どもを中心に」をテーマに失敗も大事、共に学ぶ意識を高めようと、認め励ます取り組みをされている先生がいます。よい行動があれば、「こどもも笑顔、保護者も笑顔」の一筆箋を子どもの読める字で「お家の人に渡しといてね」と渡す取り組みをしている先生がいて。友だちとの関わりを大切に、自分でやり遂げた喜びや友だちとやり遂げた達成感などを味わえるよう授業の中で取り組んでいる先生もいます。「『できた』『わかった』と言える授業を大切にしている」、「1時間に一つは大いに褒め、失敗しても『大丈夫』と声をかける」、「子どもたちがつくる授業を大切にしている」、「子どものいいところを朝の会や終わりの会で伝える」、「子どもの頑張りやいいところを保護者に連絡して共有する」、「自分の役割を持たせる」、「子どもの姿を通して、自分自身(教師)が振り返る」など、どの先生も子どもを中心にして、子どもたちの存在感や達成感、肯定感、有用感を味わわせようと取り組みを進めています。昨年度の反省を受けて、しっかり前を見つめて進もうとしています。子どもの笑顔があふれる学校にしていきましょう。

 

 

割れ窓理論

令和3年5月19日(水曜)

朝、学校のトイレに行くと、スリッパがきちんとかかとが揃って並んでいます。誰かがいつもやってくれているのでしょう。とっても気持ちのよい朝をスタートすることができます。そして、きれいに並んでいるスリッパを見ると、自分もトイレを済まして出るときには、きれいに並べて出ようと思うものです。でも、バラバラになっていると、どうでしょう?「まっいいか」とならないでしょうか。わたし自身も含めて、一人一人が本の少し気をつけて、乱れていたら直すことを心がければ気持ちよく過ごすことができます。

割れ窓理論、別名ブロークンウインドウ理論といい、アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士が提唱した環境犯罪学理論です。1枚の割られた窓ガラスを直さずにそのまま放置しておくと、壊れていることに誰も注意をはらわなくなり、さらに割られる窓ガラスが増えるという理論です。ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパンに行ったことのある人はわかると思うのですが、大変きれいに整備されていてゴミが落ちているとか、壊れたものを見ることがないと思います。来園する人のモラルやマナーが良いのは、パーク内のゴミはもちろん、壊れた箇所をすぐに修繕しているからです。そこには、「小さな乱れを放置しない」ということが徹底されているからです。

学校教育においても同じことが言えるでしょう。「部屋の乱れは心の乱れ」、教室の机が乱れていたり、ゴミが落ちていたりと放置していけば、どんどん教室が荒んでいきます。教室が荒むということは、学級の子どもたちが落ち着いて学習に臨むとか、集中して勉強をするとか、他のことに気を取られて、心の平穏が保てなくなります。そのようなことになる前に、私たち一人一人が、そして、子どもたちが「小さな乱れを放置しない」ということが大切になります。

高学年としての自覚と責任をもって!

令和3年5月13日(木曜)

5年生も6年生も高学年として1か月が過ぎました。それぞれの学年の子どもたちが、朝のあいさつ運動やウサギの世話、体育用具の整理など、学校全体のことを考えて、取り組んでいます。高学年としての自覚と責任ある行動が取れていると感じています。

さて、よく言われる「高学年の自覚と責任」とは、どういうことを言うのでしょうか。まず「自覚」とは、広辞苑によると、自分のあり方をわきまえること、自分自身の置かれている一定の状況を媒介として、そこにおける自分の位置、能力、価値、義務、使命などを知ることという意味があります。「責任」とは、同じく広辞苑によると、人が引き受けてなすべき任務という意味があります。高学年の子どもたちにとっては、自分たちのやるべきことをきちんとすること、あいさつや廊下の正しい歩行、時間の厳守など基本的生活習慣がきちんとできることが自覚であり、自分に任された役割を「学校のために」という気持ちをもって取り組むことが責任にあたるのでしょうか。

10日と13日に5,6年生は、みんなが気持ちよくプールに入れるようにプール清掃を行いました。プールサイドやプールの中は、には、枯れ葉やごみ、泥など2年間の汚れがいっぱいです。5年生は、プールサイドをきれいにする担当です。先生から、「来年は君たちがプールの中を清掃することになるからね」と、少しプールの中の掃除ができないことが残念そうでした。それでもプールサイドやプールサイドの溝にたまった枯れ葉やゴミを掃き取り、その後、こびりついた汚れをブラシやタワシで力いっぱい磨いてくれました。大粒の汗をかきながらも一生懸命に取り組んでいる姿に頼もしさを感じました。そして、6年生は、大プールと小プールの清掃です。プールの底や側面には泥やコケがいっぱいです。こびりついた泥やコケに水をかけながらデッキブラシやタワシできれいにしていきました。はじめのうちは、水に濡れることを気にしていた子どもたちも、作業が進むにつれて、全身びしょびしょになって頑張っている子もいました。濡れても大丈夫な天気でよかったです。

それぞれの学年が自分たちの役割をしっかり認識して取り組んでくれました。6月21日は、プール開きです。これから暑い夏がやってきます。安全に気をつけて、目標を持って、楽しく、安全に水泳の学習に取り組んでいきましょう。

『誰かを喜ばせたい』を原動力に

令和3年5月7日(金曜)

コーチングは、一方的な指示命令で相手を動かそうとするのではなく、相手の内側から湧いてくる動機によって相手が自ら動く、その「内側からの動機」を引き出すかかわりです。

 

一方、ティーチングは「教える」こと、知識や経験の豊富な人材が教えることを通して知識の習得を図り、成長を促すことになります。また、ティーチングは、学習プロセスが明確で多くの人に早く教えることが可能です。しかし、ややもすると一方通行となり自主性や自ら考えて行動する力が育ちにくい面があります。

 

平尾誠二さんは、「型破りのコーチング」(PHP新書)のなかで、人には、「やらなければならないこと」のほかに、「やれること」と「やりたいこと」があります。この3つを上手くつなぐことができれば、窮屈さを軽減できると。また、コーチングについて、コーチングとは、教える側の発信器ではなく、いかに教えられる側の受信機の精度を高めるかがポイントではないかといわれています。そのために、教えられる側の聴く能力を向上させることが大切であるともいわれています。では、相手の受信機の精度を上げるためにはどうしたらいいのか。それは、教える側の受信機の性能を上げることだと言われています。平尾さんは、選手の話をよく聞くことだと、そうすれば、この監督、コーチは、自分の話を聞いてくれるとわかれば、選手の方からいろいろと話をしてくれるようになる。

 

学校でも同じということです。先生が児童に「何度言ったらわかるんや」ではいけないのです。この言葉を発した時点で教師の負けということになります。コミュニケーションは「言う」ではなく、「伝える」、それも「相手が納得してくれるように伝える」ことなのです。そして、平尾さんは、「したいの」原動力になっているのは、「誰かを喜ばせたい」ということだと。